同業者
「あら、シルクロードさんが偶然この街に居るそうですわ」
「あのコラボ持ちかけてくれた配信者?」
「えぇ、今からあって色々話をしたいと連絡が来ましたわ。ニャイアルちゃんも来てくれると嬉しいです」
「はーい」
自由都市にも個室があるカフェがあるのでそこで合流するらしい。ニャイアルたちはそこに向かうと、綺麗な白のロングヘアーのプレイヤーが前から走ってくる。
「初めましてニャイアルさん、サヤさん。自分はシルクロードと申します」
そう言って深々と頭を下げる。武器は剣を背負っていたことから剣士だろうと予想が付いた。
「シルクロードさん、初めまして。この度は私たちのような配信歴の浅い者たちとコラボの話を持ちかけて頂き誠に感謝いたしますわ」
「は、初めまして!」
「ここで立ち話するのもあれなので中へと入りましょうか」
周りを見るとシルクロードを知っている人がチラホラ居るのか少しザワついていた。ニャイアルたちは中へと入ると早速話し合いが始まる。
「まずコラボ内容は何でしょうか?」
「この先のボスの討伐ですね。自分はゲーマーと名乗ってますがまだまだ小心者でして……配信者として有名になっているせいで気軽にパーティーが組めないのでこのような形を取らせて頂きました」
「分かりましたわ、私たちもそれで構いませんわ」
「うん」
「日程の方はサヤさんたちがお決めください、基本的に自分は空いていますので」
「そうですわね、ニャイアルちゃんはいつが良いですか?」
「僕は来週の初めが良いかな」
「自分もそれで大丈夫です」
「えぇ、私も大丈夫ですわ」
話はトントン拍子で進み、一人緊張していたニャイアルは安堵する。初めて会うしどんな人か動画でしか分からなかったが、雰囲気は何処か凛としているし、誠実な人だとよく分かったからだ。
ある程度話し合いが終わったあと、シルクロードが余談ですが……と話し始める。
「何でしょうか?」
(後でサヤに頭撫でてもらお……)
「実は自分、ニャイアルちゃんのファンなんです!」
「へ?」
「まぁ!」
その瞬間ニャイアルは素っ頓狂な声をあげ、サヤは素直に喜んだ。しかもシルクロードの顔は先ほどまでとは違いとても緩んでいる。
「あの小動物のような可愛さとは打って変わって戦闘時には優秀な狙撃手となって敵を殲滅する! そのギャップでやられた視聴者の一人が自分です」
「あ、ありがとうございます……?」
「ニャイアルちゃんは甘えん坊なのでそこも可愛いですわ!」
落ち着いた声は何処かに消え去り、まるで妹に接するかのような視線にニャイアルは一瞬身構えかける。そんな彼女を他所にシルクロードとサヤは仲良く話し合っていた。
「あ、後非常に烏滸がましいのですが。ニャイアルちゃんの頭を撫でても良いですか?」
「勿論ですわ」
「え? ん?」
ニャイアルの許可はあってもなくても変わらないとでも言うように、シルクロードは頭を撫でる。その顔は話し合いを始めた時の面影は残っていなかった。
「ん……ってなんで?!」
一瞬頭を撫でられて喜んでしまうがギリギリで留まった。しかしニャイアルに逃げ場はない。サヤに優しく肩を掴まれて、シルクロードが前に立った。シルクロードの身長はニャイアルよりも高い。
「さ、サヤ……? シルクロードさん……?」
「ニャイアルちゃん、後で好きなものを奢りますわ」
「ニャイアルちゃんごめんなさい! でも……ちょっとメイクするだけですから」
「そう言う問題じゃないしメイクって?!」
「課金アイテムです、メイクは得意なので安心してくださいね」
(あ、これもう逃げ場ないやつだ)
ニャイアルは体の力を抜いて身を二人に任せる。どの道逃げられないなら最初から諦めた方が疲れないと思ったからだ。
それでも羞恥心だけは捨てられないので、小さく悲鳴を上げながらメイクを受けたのだった。
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