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手遅れ

夕飯を早く食べ終わった筑紫は、母から何か言われてるのを無視し、ゲームの中に入り直した。早速ステータス画面を確認する。


名前:ニャイアル

種族:猫又lv1→2 職業:初級魔銃士lv1→3

HP:70 MP:110→140

筋力:9

頑丈:7

器用:10

敏捷:15+3 【種族ボーナス】

精神:10→13+1

知力:15→18+3 【種族ボーナス】

スキル:【魔銃ダメージ増加lv1】【チャージショットlv1】

【精神強化lv1】

SP:0→6

STP:0

装備:武器【初心者のスナイパーライフル】頭【無し】体【布の服】腕【無し】脚【初心者のズボン】靴【初心者の靴】アクセサリー【無し】【無し】


STPも六ポイントあったが精神と知力に三ずつ振った。SPは今は放置する事にした。依頼を達成しようともう一度ニャイアルが動き出した時、後ろから呼び止める声が聞こえた。


「俺らとパーティー組まないか?」


「パーティー?」


男性プレイヤー三人だったが、ニャイアルは即座に気づく。彼らはニタニタと笑い、その目は欲情に塗れている、と。


「僕はソロでやるつもりだから、ごめんだけど組む気はないけど」


「は? 何言ってんだお前」


(面倒くさ……逃げよ)


 走って距離を置こうとするがそれは失敗に終わる。相手は自分よりも移動速度が高かったようだ。回り込まれながら少しずつ追い詰められてゆく。


「逃げることはねえだろ」


「だから組む気は無いって」


「初心者の癖に……」


 周りのプレイヤー達は何故か遠巻きに見ているだけだ。どうやら助ける気はないらしい。焦り始めたニャイアルが周りを見渡すと、男の後ろから誰かが近付いて来る事に気づいた。


「ご機嫌よう、何をしてるのでしょうか?」


「だ、誰だよお前」


「サヤと申します、その女の子を離してください、スクショや録音はしましたわよ?」


「チッ………」


 男たちはそれを聞いて逃げるように散っていた。ニャイアルを助けた女性プレイヤーは初心者装備であるものの、お嬢様のような感じを受ける。


「ありがとうございます」


「気にする事はないわ、筑紫ちゃん?」


「っ?! 何でここに?!」


 目の前に居るのは現実での数少ない友達の一人、魔夜美紗夜と言う資産家の一人娘だと確信した。驚くニャイアルを他所にサヤは続ける。


「ここでは目立ちますわね、他の場所へと行きましょう」


「何で紗夜がここに……」


「それも含めてお話しますわ」


 彼女たちが行ったのはよく作戦会議等に使われるカフェの個室だった。サヤは二人分のオレンジジュースを頼むと早速話し始める。


「ふふ、部活でトラブルを起こしたと言うことを聞いて少し不安でしたが……大丈夫そうで安心しましたわ」


「それよりも答えてよ」


「そうせっかちにならなくても答えますわ。まず私がここに居る理由、それは筑紫……いえ、ここではニャイアルちゃんでしたわね。貴方の父に一つ頼まれたことがあるからです」


「頼まれごと?」


「えぇ、ニャイアルちゃんが使っているそのVRゴーグルはまだ世の中にも余り出回っていない物。それを譲ってもらうためにとある条件がありましたわ」


ここでニャイアルは父からの音声メールについて思い出す。


「確か金稼いでこいって言われたけど」


「それですわね。簡単に言えば……私とニャイアルちゃんでプレイの様子を配信をしろと言われてますわ、それの投げ銭等で稼げると言う事ですわ。勿論私がサムネイル作成や配信準備、その他諸々をしますから安心してくださいね」


「はぁ?! 訳分かんないんだけど」


「まぁその他の意味もありそうですが……やるしかありませんわ。それに部活に行かなくて済む理由も沢山浮かびますわよ?」


「うううう……!」


「それに……」


 ニャイアルにサヤが抱き付く。アバター同士と言っても質感はリアルに再現されている。サヤはリアルでも身長が高く、学校でも女子でさえ魅了する端正な顔立ちなのだ。


「ちょ……」


 勿論ゲームの中でもリアルと変わらなく美人。ニャイアルも漏れなく墜ちてしまう。側から見れば姉妹にも見える構図、だが当の本人は気にしてない様子だ。


「さぁ、頑張りましょう?」


「……分かった」


「素直で良い子ですわ」


 紗夜との関わりは幼稚園児からであるが、面倒くさがりな筑紫を何故か気に入ってよく世話を焼いていた。筑紫は最初の方は嫌がっていたものの、小学校に上がる頃には懐いていた。


「私とパーティを組んで一度狩りをしませんか? 配信をするならコンビネーションも大事になって来ますわね」


「分かったよ、サヤの職業と種族は?」


「エルフで初級祈祷師ですね、少し時間はかかりますが最初から範囲攻撃が使えて回復も出来ますの。HPが低いのが難点ですわ」


「……僕は猫又で初級魔銃士の紙装甲なんだけど、近付かれたら詰む」


「……きっと何とかなりますわ、そう信じましょう」


 既に不穏な空気が流れているが決めてしまったものは仕方ない。色々手遅れだが、ニャイアルはパーティー招待を受け取り街の外へと向かった。余談だが筑紫は紗夜に時々ゲーム機やカセットを貸し出しているため、かなりゲームに慣れている。

読んで頂きありがとうございます

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