賽は投げられていた その4
PK側は剣士が一人、魔法使いが一人だ。もう一人剣士が居たがそれは既にニャイアルが処理済みである。数的な優位は取れていた。
「ファイヤーb」
「ガゥッ!!!」
魔法使いは唱え終わる前に、首をウルルに噛まれて襲倒された。敏捷値だけで言えばこのエリアでは最速だろう。
「な、なんだこれ?!」
「ふふ、終わりですわ」
「《ボムショット》」
残り一人の足は遅くなった。既に鈍足の祈りを唱えていたのだった。そしてボムショットにより吹き飛ばされていったのだった。
「ふぅ、てか全然金落とさなかったし」
「これは……おそらくですが返り討ちにあっても良いように金は全て何処かに預けているのでしょうね。回復薬は有り難く貰っておきましょうか」
戦利品の回収を終えて潜伏ポイントへと入る。今回はそれぞれのレベル上げのため一箇所に全員居ると言うことはなく、サヤとウルルは近くで彷徨いている。
サヤも魔力探知を取ったのか一人でもある程度は戦えるようになっていた。危なくなった時はウルルかニャイアルが援護に回ることにしている。
一方ウルルの方はサンドスライムで遊んでいた。触り心地が気に入ったのか潰したり引っ掻いたりしていた。しかもダメージはちゃんと入っているので一応レベル上げにはなっている。
そんな光景をニャイアルはスコープで見守りながら通常通り狙撃をしていた。たまに上からサンドスライムが落ちてくるのは相変わらずだが、何とかなっている。
「ボムショット使うと射程が少し短くなってる気がする……」
ボムショットを使って遠くを撃つと狙った所を撃てないことがあるのだ。逆にチャージショットは射程が伸びているとニャイアルは感じていた。
そうしているとサヤがPKらしき集団に後ろを狙われているのを発見する。ウルルも気づいたようでこっそり近づいていた。
「武器構えたし黒で確定で良いよね《ボムショット》」
ニャイアルは少し上に照準を合わせて、今にも襲いかかりそうなPK達を撃った。数は四人だったが今の狙撃で一人は倒れ、残り三人は訳も分からず爆風で転がった。
そこをウルルが突撃し、サヤがPKの動きを阻害することであっという間に壊滅する。しかしまだ一人HPがあるようだった。
ニャイアルが撃とうとするとサヤがこっちに来てと言う感じに手を振っていた。そこに向かうと膝を突き手を上げているPKが居た。
「降参するから見逃してくれ」
「……許されると思ってるの?」
「いや、ただし俺はPKが増えた原因を知っている。それを言うから代わりに見逃してくれ」
「続けなさい、少しでも変な動きをしたら覚悟をしておいてくださいね?」
サヤはお祓い棒を構えたままそう言い放つ。
「あぁ、実は俺たちはそれなりの規模のPK集団でな。いきなりボスのジョーンズにここら辺でPK行為をしろって言われたんだ」
「理由は何?」
「ここらで前線から逃げた奴が居るから心を折って来いって……もう良いだろ?」
「拠点の場所を言いなさい」
「ここの街の下水道エリアだ! 頼む見逃してくれ」
「分かりましたわ、なら行きましょうか」
「これ以上狩りを邪魔されるのは勘弁だからね、あとは……」
そう言って二人に弓矢を構えようとしていた男に向かってニャイアルは銃口を向ける。
「もう少し静かに行動したら?」
「グルルルル!」
「ぐふっ…….」
男はニャイアルの魔弾とウルルからの引っ掻きによって倒されて行った。
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