賽は投げられていた その3
その後二人はログアウトしてそれぞれ休養や告知などをした。特に筑紫の方はボス戦での活躍や慣れない護衛などでとても集中力を使っていたのだ。
筑紫はいつもより早めに寝て、紗夜の方は次の配信日の日程、筑紫への連絡等を済ませてから就寝する。そして次の日、筑紫は少し寝坊をしてゲーム内で合流する。
「おはよー、次の配信日は明日で良いんだよね?」
「えぇ、明日は昼からですので少しくらい今日みたいに寝坊しても大丈夫ですわよ?」
「あはは……」
「ふふ、寝顔の一枚は撮りたいですわね」
「恥ずかしいからやめて?!」
サヤはにっこりとそう言っている。実は既に何枚か撮られていることはニャイアルに知る術はない。ニャイアルはウルルの蘇生時間が終わったことを確認して召喚する。
ウルルは申し訳なさそうに頭を下げている。どうやら最後まで戦えなかったことを悔いているようだ。しかしウルルが庇わなければサヤが死んでいたので正しい判断だったとも言える。
「クゥーン……」
「よしよし、サヤを助けてくれてありがとね?」
「……ワフッ!」
「ウルルは私を助けてくれたのですわ。責めたりはしませんわよ?」
ウルルはそれを聞くと尻尾を振って甘えてくる。二人で沢山撫でた後、ウルルのステータスを確認することにした。
名前:ウルル
種族:スピードウルフlv6→8
HP:150 MP:110
筋力:13→16
頑丈:15
器用:5
敏捷:33→36+2 【種族ボーナス】
精神:11
知力:5
スキル:【危機察知lv2】【近接攻撃ダメージ増加lv1】【悪路走法lv1】
SP:1
STP:0
装備:武器【無し】頭【無し】体【無し】足【無し】アクセサリー【ボアの首輪】
SPを五ポイント使用して、ウルルも砂漠で行動出来るように悪路走法と言うスキルを取得させる。ウルルの敏捷性が失われるのはマイナスでしかない。レベルを上げると逆にプラスの補正がかかるようにもなるスキルと書かれていた。
「あ、ウルルのアクセサリーってやー子さんでも作れるかな? 素材は一応まだあるし」
「そうですわね、なら先にやー子さんの工房に向かいましょうか」
工房に着くとやー子は暇そうにしていた。ニャイアルたちを見ると驚いたように姿勢を正す。
「おはようございます! 昨日振りですね!」
「ちょっと相談したいことがあるんだけど……この子のアクセサリー作れる?」
「獣用ですか、いけますよ! ただし素材はニャイアルさんたちで用意してもらえると嬉しいです! 私が持っている素材で作ると今は装備出来ない可能性がありますので!」
「とりあえず色々あるけどこれで足りる?」
「バッチリです! ではそちらの……毛色が通常のと違うのでスピードウルフですね! 色々質問しますので!」
昨日のサヤと同じようにニャイアルは答えていく。質問が終わると制作を始めた。その途中、やー子は思い出したかのようにこう言った。
「昨日の深夜からここら辺でPKとの遭遇率が上がっているそうなのでお気をつけください! ニャイアルさんとサヤさんなら大丈夫だと思いますが!」
「それは妙ですわね……一応見かけたら返り討ちにしておきましょうか」
「何でだろ?」
「偶然にしてはおかしい気もしますね! あ、出来ました!お代は結構です!」
やー子は出来た物を見せてくる、それは革で出来た質素な首輪だった。
ボアの首輪
防御力:8
効果:移動速度5%増加、近接ダメージ3%増加
「うん、流石元前線……」
「良い素材を渡されたらもっと凄いものが作れますので!」
「ふふ、良い腕ですわね」
「嬉しいです!」
やー子は心底嬉しそうにしている。前線に居た時はあまり褒められたことは無かったのだろうと思わせる様子だった。
二人は準備を整え、砂漠へと向かった。 PKが出ると聞かされているのでいつも以上に警戒している。そうしていると案の定、ニャイアルが不審な足音を捉えた。
「後ろからコソコソ近づいてきてる、多分三人」
「分かりましたわ、ではあそこに着いたら振り向きましょうか」
「うん」
サヤが指した場所は砂丘の頂上だった。ニャイアルたちは気付いていないフリをして、頂上に着くよりも前に攻撃されても良いようにする。
そして二人と一匹は頂上に辿り着いた瞬間に先制攻撃を仕掛けた。
「バレバレだからね?」
「ガハッ……」
「気付かれてたぞ!」
「後衛と狼一匹だ、怯むな!」
一人のPKは綺麗に眉間を撃ち抜かれて死んでいった。しかし男たちは引かない。ニャイアルはため息を吐きながら戦闘が始まった。
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