砂漠と救助
砂漠エリアへとついに足を踏み入れる二人、そこには見る限り植物はサボテンらしきものや枯れた木しかなく、砂丘が波のように続いている。
通常の装備では足が取られて移動すらままならないだろうがボアの靴があるため問題ない。スムーズに移動しながら潜伏ポイントを探す。
しかし見つける前にニャイアルたちの前に、二匹の砂漠の色に紛れたスライムと、二メートルほどの大きさの蠍が現れた。
「《ボムショット》」
「《鈍足の祈り》」
ニャイアルは早速新しく手に入れたスキルを使用する。スキル名を唱えた瞬間銃口が赤く光った。そして発砲する。
その魔弾も赤い光を増幅させながらスライムへと着弾する。ドンッと爆発音がし、直撃したスライムは勿論近くに居たスライムも一緒に吹き飛んだ。
しかも蠍にも少しダメージが入る。強力なスキルには間違いないが……。
「あー……強いけどMP消費結構多い……二十発も撃てばMP空になるよ」
「必ず当たる場面でないと撃てなさそうですわね……」
「よっと……そんな感じだね」
ニャイアルは蠍の足の攻撃を避けながらサヤと会話する。尻尾には紫色の液体が垂れているのが分かる。おそらく毒だろうと二人は判断した。
「私の方をお留守にしていますと痛い目を見ますわよ?」
鈍足の祈りの溜め時間が終わり蠍は動き辛そうにしている。ニャイアルは少し距離を取って頭を撃ち抜き、蠍は消えて行った。
「オッケー、潜伏ポイント探し再開」
「ふふ、楽しそうですわね?」
「そう? まぁそうかもね」
そして隠れながら砂丘の間に出来た空洞のような場所を見つけることに成功する。木々が少ない分周りを見渡しやすい。
「みっけ」
一匹のワームを処理したニャイアルはそう短く呟く。その姿はさながら本物の狙撃兵の様だった。サヤはそんなニャイアルを微笑ましそうに見ていた。
ボス戦終わりで疲れているはずなのに一発も外していない。稀に真上からスライムが落ちてくるが、ニャイアルが察知してくれるのでサヤが迎撃しているのだ。
そろそろ帰ろうとしたその時、ニャイアルはとあるものを発見する。
「なんかプレイヤーがPKに襲われてるけどどーする?」
「一応近くまで行きましょうか」
二人はそこに向かって進んで行く。敏捷値がお互い高いため時間は大してかからなかった。そして近くまで近づくと悲鳴の様な声が聞こえてきた。
「不味い不味い不味い不味い不味い!」
「素材落とせお前!」
「後もう少しだぞ!」
かなり軽装の、白色のベレー帽を被ったエルフらしき女性プレイヤーが逃げ回っていたのだ。会話から察するにHPは後少ししか残っていないのだろう。
サヤは思うところがあったのかその女性プレイヤーに聞こえる声でこう言った。
「助けが必要ですか?」
「誰ぇ?! とりあえず悪魔でも天使でも神でも仏様でも良いから助けて!!!!!!」
「と、言ってますがどうしますか?」
「んー、助けるか。《チャージショット》」
「何だおま」
ニャイアルはPKの男が自分達の方に向いた瞬間に魔弾によって射殺した。残る一人は不味いと判断したのか即座に逃げて行き、その場には息を切らした白いベレー帽と探検服姿の女性プレイヤーとニャイアル達が残されたのだった。
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