役割分担その3
より一層の気迫を持って、先ほどよりもさらに早くなった突進で襲いかかって来る。難なく避けることに成功し立て直そうとしたその時だった。
「ブルッ!」
「うそっ?!」
「え?」
突進を外して止まるかと思いきや、ニャイアルたちの後ろにある木の幹に当たった反動で跳ね返ったのを利用して方向転換したのだ。そしてそのままサヤに止まらずに突進する。
十分な距離を取れていなかったサヤはそれを避ける余裕が無い。しかも火の障壁を発動させるにしても一秒はかかるのだ。サヤは覚悟して構える。
「グルルルルガォッ!!!」
しかしサヤにその衝撃は来なかった、何故なら……。
「ウルル?!」
「ブルァッ?!」
ウルルがギリギリのところで真正面からぶつかったからだ。ビッグボアもこれには堪えたようだ。突進をやめて後ろに少し下がる。
しかしウルルも無事では済まなかった。ぶつかった衝撃でHPが全損して吹き飛ばされ、光の粒子になってポーチの中にある召喚石へと吸い込まれて行った。
ビッグボアのヘイトはサヤに向いたままだ。彼女はそれを確認するも逃げずに火の障壁を即座に発動させる。ニャイアルはその意図を汲み取り後ろ足を狙う。
「ぐっ……これくらい、大丈夫ですわ」
「《チャージショット》、ちっ……早めに決着つけないと」
カバー要員であるウルルが居なくなったのだ。それまであった余裕が嘘のように無くなる。サヤは突進を喰らうが火の障壁のお陰か吹き飛ばされずに済んだ。
ニャイアルはチャージショットで後ろ足を撃つ。ヒットするも前半よりは効いていない様子だった。しかし弱点部位であることは変わりないのでそこを狙い続けることに変わりはない。
今のビッグボアは突進のスピードが速くなり、連続で突進して来るようになっている。それに加えて近づき過ぎると蹴りを喰らってしまう。
コメント欄もほぼ応援のもので埋まっていた。視聴者の数も三百人を越えている。二人はその三百人を越える応援とウルルの犠牲を背負いながら戦っているのだ。
そして二人の集中力の限界が近づいてきた頃、ビッグボアの動きも少し遅くなる。原因はニャイアルによる弱点部位のダメージの蓄積だ、ここに来て彼女の努力が身を結んだのである。
「あともう一踏ん張りですわ!」
「分かってる!」
お互いを確かめ合うように声を上げて魔弾と魔法を放つ。遅い動きはさらに遅くなってそこを逃さないとでも言うように狙撃が入る。
そして……。
「ブルッ…………」
「倒したぁ……ウルルありがと……」
「ふぅ……やりましたわね」
ビッグボアは地に伏せてポリゴンの欠片となり消えて行く。コメント欄も拍手と賞賛で一杯になる。こうして二人と一匹の力でギリギリ第三の街へと行けるようになったのだった。
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