役割分担その2
ニャイアルたちは突進を避けてそれぞれに散る。そして一番目にヘイトが向いたのはニャイアルだった。既にサヤは溜め時間へと移行している。
「ブォッ!」
「おっとっと……隙は大きいんだね」
またも突進して来るが無事に避けることに成功する。突進を避けられた後は一瞬こちらを見失うのか立ち止まるのだ、その瞬間を狙って撃つ。
魔弾はちょうど尻に当たるが怯んだ様子はない。それどころか更に怒り狂っているようだ。もう一度突進される前サヤの鈍足の祈りの溜め時間が終わる。
「ブオォ……」
「《チャージショット》」
「ガゥッ!!」
ボスの動きすらも遅くなる鈍足の祈りは溜め時間こそ長いものの効果は絶大だ。突進もチャージショットを使っても避けられるくらいには遅くなる。
ウルルもその瞬間を狙って前足に噛み付く。しかしあまり効果は無いようだ。チャージショットがビッグボアの当たるも、少し痛そうにしているだけだ。
「かったいなぁ……弱点部位とかないかな?」
「《樹の祈り》」
流石のビッグボアも、サヤを自由にさせておくのは不味いと判断したのかターゲットを変えた。しかも運の悪いことに今は動けない。
「ウルル!」
「ガゥッ!!」
ウルルはビッグボアの後ろ足へと噛み付く。半分苦し紛れの攻撃だったが……。
「ブルル!?」
急に動きが鈍くなり、サヤへの突進をやめた。そしてまるで後ろ足を庇うようにして後ろに下がる。
「まさか後ろ足が弱点部位……? だとしたらウルルナイス」
「ワフッ!!」
ウルルの働きでビッグボアが木の幹で拘束される。しかし数秒後には破壊されそうだが、数秒もあればニャイアルにとっては十分だった。
ニャイアルはその場で狙いをつけて、僅かに見えていた後ろ足を撃ち抜いたのだ。ビッグボアは痛いのか悲鳴らしき鳴き声をあげている。
サヤはHP減ったウルルを回復させた。二人が余裕を持って戦えてるのはウルルの活躍に他ならない。そのまま鈍足の祈りの溜め時間へと入る。
ビッグボアの攻撃は慣れてしまえば問題のないものだったのだ。突進のスピードは通常の猪より少し速い程度、敏捷値がそれなりにあり、落ち着いて動きを見れば簡単に避けられる程度のものなのだ。
だがニャイアルは撃ちながらの戦いなの、後ろに注意しながら回避しないとその内追い詰められてしまうので油断は禁物なのだ。
それとたまに石を飛ばして来るのでそれの警戒もしなければからない。どうしても避けられない時はウルルがその身を呈して庇っているのだ。
そうして何発目かの後ろ足への狙撃が成功した時、ビッグボアはこれまでで一番大きく鳴いた。おそらくHPが半分減ったためであろう。
「ここからかな?」
「そのようですわね、何が来ても良いようにしておきましょう」
「グルルルル!」
ニャイアルたちは先ほどまでより警戒しながら後半戦が始まるのだった。
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