森の祈祷師
教会の近くへと向かうと、ちょうどサヤが出てくるタイミングだった。
「無事に出来ましたわ」
「何にしたの?」
「森の祈祷師と言う職業です、火属性の魔法は使えなくなりましたが……代わりに妨害魔法が増えましたわ。攻撃魔法もあるにはありますが……オマケ程度ですね」
「妨害が増えるなら戦いやすくなるかな。とりあえず試しに行く?」
「そうですわね、行きましょうか」
ニャイアルたちは森の方へと行った。 草原ではPK以外の敵は相手にならないからだ。サヤは足場の悪い森に少し苦戦をしながらも着いていく。
「よく歩けますわね……」
「慣れてるからね、父のせいで」
隠れるのにちょうど良い場所を見つけ、敵を探す。サヤはウルルと一緒に近くを歩いている。すると猪のような敵がサヤたちに突撃してくる。
「《樹の祈り》」
「グルル!」
突進を横から妨害するようにウルルは噛み付く。阻止まではいかないものの軌道を逸らすことに成功した。猪はサヤの真横を通り過ぎて行く。
そして詠唱時間が終わり、魔法が発動する。すると猪が地面から生えた樹の幹のようなものに拘束された。暴れているが脱出される気配はない。
続けてサヤはもう一つの魔法の詠唱時間に入った。
「《木槍の祈り》」
ウルルも脱出されないようにかぎ爪で引っ掻いていく。そうして猪の身体を、地面から飛び出してきた尖った木に貫かれて消えていった。
「えっぐ……」
「こんな感じですわ」
ニャイアルが若干引きつつも、狩りは続けられる。ゴブリンの集団もニャイアルの援護射撃とサヤの妨害、ウルルの素早さがあれば特に問題なく倒せたのだ。
そのまま奥に進むと、第一の街の森で見たような建物が見えたのだ。おそらくこれがボス戦の場所だろうとニャイアルたちは何となく察する。
「ここのボスはなんだろね?」
「おそらく猪の強化版かゴブリンの親玉的な存在だと思いますが……挑むのは配信の時にしましょうか。ボス戦は貴重な撮れ高ですから」
「はーい」
ニャイアルのMPもとてもボス戦に挑めるような量ではないのだ。それにウルルも心なしか疲れてきているように見える。
「それまで装備を整えつつレベル上げですわ、ニャイアルちゃんが言っていた出店にも行かなくてはいけませんし」
「そーだね、頑張るか」
「ふふ、ニャイアルちゃんの口から頑張るの声が聞こえましたわ。私も頑張らなくてはなりませんね」
「ん? ま、言っちゃったからにはやらないとね」
普段面倒くさがりの彼女が自分から頑張ると言い出すのは本当に珍しいものだ。サヤはそれに少し感動しつつも顔には出さないようにする。
「ん、じゃぁ行こっか」
「えぇ、そうですわね」
二人と一匹はまた森へと駆け出して行った。夕食の時間をすっかり忘れていることに気づかずだが。
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