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終わりの始まり

 世は大体2xxx年頃、エネルギー問題や環境問題等諸々が何故か奇跡的に解決した。ついでに技術力も飛躍的に向上し、誰もが幻想だと言ったゲームの中に入れるVRゴーグルを日本が初めて開発したのだ。


 そんな各国から変態と言われた日本に住む何処にでも居る……。訂正、ちょっと捻くれた思考を持つ短髪癖毛の女子高生、筑紫癒猫(つくしゆねこ)は現在進行形で部活の人間関係が詰んでいたのだ。


「僕にやる気出せって言われても無理……」


 そんな事を叫びながら(てんごく)へと急ぐ。その理由は彼女が生粋のゲーマー、しかも一時期廃と言う文字が付くほどやっていたからである。


(念願のVRゴーグル、それにセットで最新のVRMMOも貰えたし早く帰らないと)


 現在の季節は夏一歩手前だが、彼女にとって暑さを忘れさせるには十分なことだった。過去最速で家に辿り着いた彼女は着替えなどを数分で済ませる。


「夏休みの宿題しなさいよ?」


「はーい」


 気の抜けた返事を母にしながら自分の部屋へと向かう。


「あ……セッティングとか色々しなきゃならないんだった。面倒くさ……」


 説明書と機器を交互に見ながらセッティングを進めていく。面倒とは言っても十分ほどで完了した。


 VRゴーグル、ゲームの中に入れたり仮想空間で授業とかも出来るらしいけど彼女は数々の便利機能を気にも留めずゲームのカセットを眺める。


「君は何がしたい? これゲーム名なんだよね」


 ゲーム名としてはパッとしないが一番遊ばれているVRMMOみたいだ。今までに無かったシステムの数々、自由度の高さ、グラフィックの進化、並の企業が出来ないことを成し遂げたゲームだ、と父から彼女は聞かされている。


 今回このゲームが手に入れた経緯も父の友人から()()()()()()()特別に最新機器を貰った、と言う事だが筑紫の頭からはその事は既に抜け落ちている。


 そんな彼女は何が起こるか知らずにゴーグルを装着し、電源を付けた。


(夏休みの宿題……まだ夏休みにすら入ってないしいっか)


 VRゴーグルの起動音を聞きながら待機すると、目の前が真っ暗になり、気付けばそこは雲の上の様な場所。


「ほぇ〜、リアルだなぁ」


 試しに触ってみればふわふわとした手触りが伝わってくるのだ。初めてのゲームの世界に彼女が早くも感動していると、機械的な声が響く。


「ようこそ筑紫様! 新しくアバターをお作りなられますか?」


「作る」


「了解致しました! ではアバター名をお決めください」


「アバター名か……」


 ゲーマーの彼女だが、決まった名前というものがなく気分で付けているの。そのせいで名前のレパートリーが少なくなってきている事案が発生していた。


「うーん……ニャイアルでお願い」


「ニャイアル、でよろしいでしょうか?」


 目の前にカタカナの文字が浮かぶ。彼女はそれを確認し頷いた。


「アバターの姿と種族をお決めください! 注意点として一部の種族はアバターの見た目が強制的に変わる可能性がありますので覚えておいてください」


 すると彼女の目の前に半透明の画面が浮き上がった。そこにはデフォルトのアバターの姿と、いくつかの種族名が書かれていた。アバターの方は自身の美化し、髪を金髪のロングにして終わる。


「ん……ぱっと見良く分からないし面倒、なんかオススメ無い?」


「オススメというのはありませんがランダム機能と言うのはあります。選び直しは出来ませんが文字通りランダムで種族を決めてくれるという物です」


「ならそれにするからお願い」


「了解しました。では、止めたいタイミングでストップと言ってください」


 するとルーレットが現れ、ひとりでに回る。目押しはほぼ無理に近い。回り初めて数秒経ったところで、彼女は止める。


「ストップ」


「では……おめでとうございます、猫又に決まりました!」


「猫又? そんなのあったっけ?」


 種族リストを見る限りそんな物は無かったはずだ。しかし数ある中から見返すのを面倒だと感じた彼女は、一瞬悩んだ後に考えるのを辞めた。

 アバターには二本の細長い尻尾と、ネコミミが生えている。


「悪くは無さそうだからいっか」


「では最後にジョブを選んでください」


 初級戦士に初級調合士や初級魔法使いetc……。色々あったが彼女改めニャイアルの心は、全て如何に楽を出来て楽しめるかというところに全てを振っている。


 前に出て戦いたくもなければ永遠と生産活動をやる気もない。そうしてニャイアルの目に、一つの職業が留まった。


「初級魔銃士にしよ」


【初級魔銃士】

自身のMPを使用して専用の銃から魔力の弾丸を放つ。ダメージは自身の知力依存になり、体力も低いが中距離から遠距離まで狙えるジョブとなっている。知力と敏捷に補正が入る。

ダブルハンドガン型、スナイパーライフル型、アサルトライフル型の三種類から選択可能。


 父はサバゲーにハマっており、そのせいで稀によく連れてかれて無駄にエイムは良くなっているのだ。遠距離から安全に狙撃出来るスナイパーライフル型を選ぶと、筑紫の身体が、ニャイアルのアバターへと変化する。


「おー、耳もふもふしてる」


「チュートリアルはスキップ可能です、どうされますか?」


「じゃぁスキップ」


「了解致しました、チュートリアルを受けた後に貰えるアイテムなどは受け取れます」


「はいはい」


「それと一点……ニャイアル様へ音声メールが来ています」


「ん?」


「癒猫、お前バイトしないんだったらこのゲームで金を稼いでみたらどうだ? まぁ初めてみれば分かる。気楽にやって良いぞ。以上になります」


「へ……?」


「それでは自由と混沌の大地へ! 御健闘をお祈りします!」


「あ、まって僕はそんなk」


 その声は虚しく消えて行く。そもそもキャラメイクをする場所は雲の上のような場所では無く、森の中ような場所でチュートリアルは必ず受けなければならない物だと分かり、父の言ったことの意味を理解するのは後もう少し先のことである。

読んで頂きありがとうございます、不定期投稿ですのでご容赦を

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