戦利品と一匹の狼
全てのゴブリンを倒し切ったが、最後に一つやらなくてはならないことがある。それは戦利品漁りだ。村はゴブリンを倒しても無くならなかったことで、何かあるということだろうと彼女は察する。
「良い物があると良いけど」
最初に目に入ったのは一番大き建物だ。中を見ると動物の毛皮が大量に置いてあった。恐らくは村全体の寝室みたいな所だろう。
所々に籠のような物があり、中には何本かの薬草らしき草が入っていた。
毒消し草
説明:森の中で採れる中でも一般的な毒消し薬の元。加工は簡単だが効果は作り手の技量次第で変わる。
麻痺草
説明:森の中で採れる中でも一般的な麻痺薬の元。加工は簡単だが効果は作り手の技量次第で変わる。
この二種類がほとんどだった。後でサヤに渡しておこうと思いつつ仕舞い、他の建物へと行く。道中に畑もあったが、作物は枯れていて意味を成していない。
次に入るのは倉庫らしき場所。地面より少し高い位置に作られているのでニャイアルはそう判断したのだ。中は予想通り倉庫だったが物資は少ない。
ゴブリンたちが使っていたボロボロの剣や槍、弓矢などが置かれている。一つだけ鞘のような物もあったが使い方が分からなかったのか放置されたままだ。
他には投石に使えそうな石や、野生動物らしき頭蓋骨が放り捨てられている。防具などの類は見当たらなかったのでゴブリンたちが付けていた物が全てだろう。
彼女は薬草と使えそうな毛皮だけ持っていき倉庫を後にする。他に何かありそうな建物は一つだけだ。扉は開けっ放しで中は何かを飼っていたような場所だ。
「あのゴブリンライダーが出てきた場所かな? せめて薬草以外の物がありますよーに」
そう願いながら周りを漁る。ここまで碌な物が見つからなかったのだ。しかしその願いは届かずあるのは食いかけの餌らしき肉と、訓練に使っていたであろうボロボロの防具だけだった。
ため息を吐きながら出ようとすると、後ろから足音が聞こえた。彼女はそれに反応し咄嗟に銃を構える。そこには少し緑がかった毛色を持つ小柄な狼が近づいて来る。
「まだ居たのか、なら」
「クゥーン……」
「ん……?」
撃とうした彼女は、狼が頭を下げて伏せている姿に戸惑いを覚える。警戒しながらも銃を構えるのを止めてゆっくりと近づいて行く。
「……襲って来ないんだね?」
「クゥーン……クゥーン……」
狼は弱々しく鳴いている。ニャイアルは狼の様子を確認すると足を庇うようにしているのが分かった。
「(見捨てるのもなぁ)回復薬飲ませとくか」
良心に訴える物があったのか、仕方なく彼女は回復薬を狼に飲ませる。狼は飲んだ瞬間弱々しく鳴くのを止めた。そしてニャイアルに向かって……。
「ガゥッ!」
「へ? 確か腹を向けるのって懐いてるとかそんな理由だったよね?」
腹を向けたのだ。流石にニャイアルも混乱した。確かに助けはしたものの襲いかかって来るか、逃げ出すと思っていたからだ。
それに追い討ちをかけるようにして一つの画面が出る。
スピードウルフを従属させますか?
YES/NO
「なるほどねぇ……どうしたものか」
狼は潤んだ目でニャイアルを見つめる。ニャイアルも悩むように狼を見つめること数分。ニャイアルの方が根負けしてYESを押すことになった。
「これからよろしくね? ウルル」
名前はその場で適当につけて、一緒に街へと戻ったのだった。
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