何が出来るのか
ニャイアルは草原の奥、木が密集している森の方へとたどり着いた。目的は地形を調べるためと、敵の種類などを確認するためである。
視界は悪く、前の森より暗いがニャイアルにとっては好都合だった。魔力探知を発動し、近くに敵が居ないことを確認してスコープを覗く。
(その分射線も通りにくいけど……狼か)
灰色の毛並みの狼四匹の群れを発見する。一匹は確実に仕留められるが、他は処理する前に接近されるだろう。逃げ道も確保しずらい。
「逃走経路、か……魔力探知を使う頻度上げるか」
狼の群れはまだ此方に気づいていない、周りを見渡す時間はしっかりとある。ニャイアルは狙撃兵らしく戦う必要があるのだ。
幾つか俊敏に動けば隠れられそうな場所を見つける。魔力探知をしてから逃げようとニャイアルは考えながら引き金を引いた。
「キャゥンッ?!」
「ワォーン!」
一匹は頭を撃ち抜かれ倒されたが、案の定他の狼には位置がバレた。予定通り魔力探知を使用して彼女は予め見つけておいた場所へと足跡を出来る限り立たないように、なおかつ速く移動する。
「グルルルル! ガゥッ!」
「よーし……上手いこといった」
そして狼たちはニャイアルの姿を見失った。ここまでは順調だ。しかし射線が木々によってかなり遮られてしまっているが問題はない。
微調整をし、魔弾を撃った。そしてそれは狼のこめかみを貫く。狼側も視線が遮れているのかニャイアルの発見が遅れる。その隙を狙ってもう一匹倒された。
「残り一匹なら問題ない」
「グルルルル!!!」
怒り狂った狼がこちらに襲いかかってくるがその前に……。
「キャンッ?!」
「お疲れ様」
ニャイアルにとって真っ直ぐ走ってくる存在は的と同じだ。容赦なく狼は撃ち抜かれ消えていった。一対多でもやり方さえ考えれば戦えるのだ。
(サヤに頼りっきりだしなぁ……ずっと頼ってても申し訳ないしある程度は僕も頑張らないとね)
サヤ本人が聞けば大喜びしそうな言葉だが、残念ながら今は居ない。本人の前で言わないのは照れているのか、それとも別の理由があるのかはニャイアルにしか分からない。
彼女は次の標的を探しに歩き出す。プレイヤーもチラホラ見かけるが足場の悪さに苦戦しているようだった。彼女は父によって悪路は何故か鍛えられていた。
すると前方にゴブリン五体の集団を視認する。ニャイアルはゴブリンの集団に近づくために慎重に進んで行くと、建造物が見えたのだ。
(あれは……ゴブリンの集落?)
森の中に不自然に開いた場所、そこではゴブリンたちが建物を作り生活らしきことをしていた。しかし所詮はゴブリンだ。適正レベルのパーティーだったら壊滅など容易いことだろうが、今は彼女一人しかいない。
「やれるかな……?」
しかしニャイアルはやる気だ。銃を構えポジションを探す。周りには幸運なことに低木や、背が高い草などが生い茂っている。条件は整っていた。
(サヤが僕の立場だったらどうするかな? 少しでも無茶を感じたな引きそうかな)
そんなことを考えながら最初の一匹目に狙いをつける。村の中を警戒している様子だった。
「グギャッ?!」
「ギャギャ? ギャギャ!」
こうして戦いの火蓋は切って落とされた。
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