始まる夏休みと現状確認
配信が終わった後はそのままログアウトし、次の日。二人は終業式が終わり家に帰るところだった。
「やっと夏休み。バイバイ部活」
「そう言うところは変わりませんわね? 弓道部も悪い部活ではないと思いますが……」
「弓触りたくてやってるのに、熱意求められても困るよ。部活の方針とか面倒なのは知らないし……」
「しかし部活に入っていないのも考えようですわね」
「だからさっき顧問と部員全員と話し合いしてきた。話し合いって言っても、僕の要求押しつけるだけだったけどね」
「あら……それってかなり長引くと思いますわ……」
「だから逃げてきた。そろそろ部員全員と怒り狂った顧問来るから帰るね。あ、集合場所は噴水広場で」
「巻き込まれる前に私も逃げますわね、分かりましたわ」
追いかけてくる部員全員を尻目に、全力で自転車を漕ぐ。そして無事に撒ききって帰宅したのだった。家に入ると、いつも通り父は居ないが母が外用の服を着て支度をしていた。
「お帰り。ご飯そこ置いとくから食べといてね」
「はーい、何処か行くの?」
「ママ友でカラオケよ。面倒だけど行かないともっと面倒なことになるから行ってくるね。多分帰りが遅くなるから夜ご飯も適当に何か食べてねー」
「はーい、行ってらー」
母も面倒くさがりだが、カラオケで百点台を連発出来るくらいには上手なのだ。今回も母は盛り上げ役に使われるだろうと筑紫は思いつつ、昼食を食べた後ログインしようとする。
「ん? 紗夜遅れるのか」
紗夜から昨日の初配信の報告や、その他諸々で遅れるとの連絡が来たのだ。しかし他にやることはないので筑紫はゲームの中に入る。
(ソロプレイか……いけるかな?)
あくまでニャイアルは遠距離アタッカーなのだ。近づかられると基本はなす術なく倒される存在。なので今の自分に出来ることと、近づかれても離脱出来る方法の一つは持っていなければならない。
「んー……とりあえずプレイヤーの出店地帯行くか……。これを売ってくれた人に礼を言いたいし」
出店地帯に寄ると、変わらず人は居ないが少年のアバターの春翔がそこに座っていた。
「お、この前買ってくれたお客さんじゃん」
「これとサヤが買った武器のお陰で助かったから礼を言いに来たよ」
「そりゃどーも。他に何か買ってくかい?」
「それよりも防具ら辺が欲しいけど売ってないんだよね」
「そうだねぇ……あ、そうだ」
春翔は少し悩んだ後に、何かを思いついたかのような声を出す。その内容はニャイアルにとってとても良いものだったのだ。
「あそこを曲がって直ぐの所にある出店、僕とおんなじ様に人が寄ってない所があるからそこに行けば?」
「分かった、ありがと」
「後僕は明日には第三の街、いわゆる通常ルートの方に行ってるからねー」
「はーい」
春翔の所を離れ、言われた通りの場所へと向かう。そこは薄暗くとてもじゃないが人が寄り付かなさそうな場所に、出店は有った。
「いらっしゃいませ……」
「おぉう……商品見て行って良い?」
「お好きにどうぞ……」
声は小さく雰囲気はこの場所より暗い。しかし身につけている民族衣装のような赤い服とアバターはツノが生えている女性のプレイヤー、魔山に少しニャイアルは驚く。しかしそのことを魔山は気にしていない様子だ。
品はほぼ髪飾りのアクセサリーだった。どうやら頭防具とは種類が違うらしい。その中でも緑色のシンプルなシュシュが目に留まる。
深緑のシュシュ
防御力:1
効果:地面に身体の八割以上が付いていると、一日に一回だけ、任意で三秒間だけ姿が見え難くなれる。完全に見えなくなる訳ではない。
「これいくら?」
「それですか……二千Gでどうぞ」
「(安くない?!)う、うん」
そう言ってニャイアルは代金を払う。このシュシュは彼女にとっては有り難い効果だった。
「今日は……在庫が少ないのでまた明日来てくれたら……もっと良いものが出るはずです……」
「そうなの? じゃぁありがとね」
「ありがとうございました……」
そう言ってその場を後にする。そしてニャイアルはソロでの狩りをしに行くのだった。
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