気まぐれ商人
「最悪ウチが助けに行こうかと思ったんやけどなぁ」
「……さっきの敵が寄ってきた原因って」
「ウチやで」
それを聞くと共にニャイアルたちは武器を構える。敵を呼び寄せた犯人はそれを見て慌てた様に地に膝を付けて両手を上げる。
「こ、殺すつもりはなかったんや! ウチはもう何もせん!」
「サヤ、どする?」
「今すぐに倒しても問題無いですが……」
「グルル……」
「ゆ、許してやぁ!」
「《ボムシ」
「待ってくれか!」
ニャイアルがトリガーを引こうとした時、晴翔が庇う様に射線上に立つ。
「晴翔さん……?」
「面倒な事に……」
「状況は飲み込みませんが、それ相応の理由が無ければ晴翔さん事攻撃しますわ」
「このバカ商人が僕のクランマスター何だ」
「は、晴翔ぉ……助けに来てくれたんなやぁ」
「黙れバカ商人」
「本当に?」
「認めたく無いのも分かるけど本当なんだ……」
「ウチの扱い……」
一触即発の空気が一気に弛緩する。ニャルフたちも警戒を解いて武器を仕舞った。晴翔は疲れた様な顔をしてその場に座り込む。
「マスターはさっさと自己紹介しろ」
「扱いが酷いなぁ……こほん、ウチはクラン、放浪商人隊のマスターのリフムや!」
「本当にすまない……まさかこんな事になるなんて……」
「う、うん」
「……大変そうですわね」
「この頭に一発弾丸を受けて欲しいんだけど、能力は優秀だし貴重なアイテムを持ち歩いてるから死なせる訳には行かないんだよ……」
「能力はとはなんや!」
「リアルが二十五歳超えてる大人が騒がないでくれるか?」
「まだピチピチや! 晴翔より年上やからな!」
ニャイアル達はウルルも含め、晴翔に同情の目を向けていた。側から見れば幼女が駄々を捏ねてる風にか見えないからだ。
「はぁ……一旦街に戻ろうか、マスターも寄り道せず着いて来い」
「ウチにも敬語を使って欲しいんやけど」
「ニャイアルさん、サヤさん、アレのことは気にせず行って良い。自衛出来る位のモノは持ってるからね」
「分かった」
「承知しましたわ」
その後は時々晴翔がフリムの首根っこを掴んで引っ張りながら街へと戻った。そして魔山が居る集合場所へと着いた。
「マスター……また……やらかしたの……?」
「こ、今回は偶々や!」
「とりあえずニャイアルさんとサヤさんに土下座しろ」
「そ、そんな石ころを見る様な目でウチを睨まんといてや……」
「早くしろ」
「うぅ……誠に申し訳ありませんでした」
「アイテムと金も後でぶん取るから許してくれないかい……?」
「僕は大丈夫」
「私も今回のことは水に流しましょう」
「ありがとう、これでやっと本題に入れるよ」
安堵した晴翔はフリムが逃げれないように見張りながら、遂に話が始まるのだった。
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