寄せ餌
「ふぅ……疲れた」
「お疲れ様です、ニャイアルちゃん」
「ん……」
「ワゥッ」
配信も終わりかけになり、いつも通り疲れたニャイアルをサヤが労っていた。特に何事もなく終わって終始平和だったのだ。
「では本日はここまで……」
「避けて!」
「っ?!」
「ワゥッッ?!」
サヤに頭を撫でられて落ち着いていた彼女は、ハッとした様にそう叫びサヤの手を引き、ウルルも驚きながら飛び跳ねる。
パリンと何かが割れる音が鳴ると同時に、周囲にオレンジ色の煙が広がる。そこまで濃くはないが視界は多少妨げられる。
「一体何が……」
「何か投げられる音がしたから咄嗟に言っちゃったけど……」
「離れたらダメですわ」
「ガゥッ!」
それぞれ念のためMPポーションを飲み干して戦いに備える。
「……敵がたくさん集まって来てる」
「この煙が原因でしょうか……ともかく今は乗り切らなければなりませんわ」
「晴翔さんとの約束もあるのに……」
煙は未だ晴れず、サヤとウルルにも翅の音や足音が聞こえる。煙の範囲、投げた犯人すら分からない状況で戦わざるおえない状況になってしまった。
「《ボムショット》、サヤは僕の後ろお願い」
「分かりましたわ、《石弾の祈り》」
「ガゥッ!!!」
サヤの石弾の祈りは岩雨の祈りよりは火力も範囲も下がるが、燃費と詠唱時間は良いので雑魚戦には丁度良いのだ。
ニャイアルもスキルレベルが上がって、爆発範囲も上がっているボムショットを使いつつダメージを与えていた。
ウルルは二人が撃ち漏らした敵の妨害や、弱った敵の処理をしながら走り回っていた。ニャイアルが敵位置を把握し、指示を出していたりこれまでの経験もあって徐々に優勢になっていく。
アクセサリーの王骨の笛の効果もあってかウルルは多少の被弾なら問題がなくなっていた。
「少し敵が打たれ弱く感じますわ、気のせいでしょうか……」
「《ボムショット》、投げた犯人を見つけて捕まえたら分かるかなぁ……」
「それに私たちを狙ってたにしてはピンポイント過ぎますわね、ニャイアルちゃんの聴覚にもギリギリまで引っかかりませんでしたし」
「んー……」
首を傾げつつも敵の殲滅が完了し、煙もそれと同時に晴れる。辺りには誰も居らず何も聞こえなかった。時間も約束の時間に迫っていたので配信を切り、街へと戻り始める。
「今の戦闘で経験値がそこそこ入りましたわね」
「敵も居なさそうだし確認しとく?」
「えぇ、そうしましょうか」
「ワゥッ」
名前:ニャイアル
種族:猫又lv31→33 職業:天賦ノ狙撃魔銃士lv7→9
HP:130 MP:590→600+10
筋力:9
頑丈:13
器用:10
敏捷:45+9 【種族ボーナス】
精神:54→55+5
知力:49→54+9 【種族ボーナス】
スキル:【魔銃ダメージ増加lv9】【チャージショットlv8】【ボムショットlv6】【ブリーズショットlv3】【煌撃lv2】【ダブルショットlv2】【状態異常耐性lv1】【精神強化lv5】【鑑定lv1】【消音lv2】【魔力探知lv3】【軽業lv3】【移動速度上昇lv3】【暗視lv1】【ウェポンチェンジ】
特殊スキル:【妖の陣・小】
SP:12→18
STP:0
装備:武器【火紅鉄のスナイパーライフル/PNT-005】頭【岩大鳥のフード】体【軍魔の制服】腕【岩大鳥の革手袋】脚【軍魔のスカート】靴【軍魔の靴】アクセサリー【身隠しのチョーカー】【黒蜘蛛のウェストポーチ】
名前:ウルル
種族:アクセルウルフlv21→24
HP:280 MP:150
筋力:41→45
頑丈:28
器用:6
敏捷:80→85+8 【種族ボーナス】
精神:15
知力:6
スキル:【危機察知lv6】【近接攻撃ダメージ増加lv7→8】【悪路走法lv1】【移動速度上昇lv3→4】【全力疾走lv3→4】【暗視lv1】
SP:15
STP:0
装備:武器【合金の獣刀】頭【無し】体【無し】足【無し】アクセサリー【王骨の笛】
レベルが上がりづらくなって来たが、蜂の強化や先ほどの事もあり経験値が大量に入っていたのだ。
「では行きm」
「ちょっと待ってやぁ、そこのお二人さん」
「ん?」
後ろから突然、愉快そうな少女の声が聞こえた。振り返ると緑色の民族衣装と、それに似合わない黒色のマントを付けた、晴翔と同じくらいの身長のプレイヤーが立っていたのだった。
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