トラブル
「晴翔さんの所に行きますわよ」
「大丈夫かなぁ……」
「行かないことには分かりませんからね……」
次の日、配信が始まる前にニャイアルたちは指定された場所へと向かっていた。そこは出店地帯の奥だった。
「ん……他に誰か居る」
「もしかして魔山さんでしょうか……?」
「多分」
目的地に着くとそこには魔山と晴翔が待っていた。
「やぁ、こんにちは」
「こんにちは……」
「こんにちわ、お取り込み中でしたでしょうか?」
「いや、魔山も居た方が都合が良いんだ。それに後一人居る予定だったんだけど……」
「後一人?」
「はい……私たちのクランマスターです……」
晴翔は以前にクランに入っているとは言っていたが、詳細まではニャイアルたちは聞いていなかった。
「はぁ……ついさっき花畑で遊んでくると言われたんだよ。これじゃしばらく戻らないよ……」
「本当に……ごめんなさい……」
「大体いつ頃戻って来ますでしょうか……?」
「多分最低二時間は遊んでるだろうね、キツめに連絡はしたからそれくらいで戻ってくるだろうけどさ」
「配信しなきゃいけないし……サヤ、どする?」
「私たちの配信もそれくらいで切り上げてここに戻りましょうか」
「はーい」
「本当にすまない……」
晴翔はため息を吐きながらそう嘆いた。どうやらいつもそのクランマスターに振り回されている様子に見えた。
「僕たちは今日はここから動かないから待たせてもらうよ」
「お気をつけて……」
ニャイアルたちは配信の準備をし、早速始めた。いつも通りの挨拶を終えて本題に入る。
「今日は私たちからお知らせがありますわ、ニャイアルちゃんお願いしますね」
「えっと……サヤと……」
「もう少し前に出てくださいね」
「わ、わかった。……僕とサヤはこ、恋人になったからよろしく」
「もう少し大きな声で」
「さ、サヤと恋人に」
「もっとはっきりして欲しいですわ」
「サヤと恋人になった!」
「ふふ、よく出来ましたわ」
「意地悪……」
サヤは意地悪な笑みを浮かべながら逃げ隠れるように側に来たニャイアルをハグして頭を撫でる。そしてコメント欄は大いに湧いた。
名無しさん:?!
名無しさん:へ?
名無しさん:百合婚ですか?!
名無しさん:ぐふっ……
名無しさん:お、おめでとう!!
名無しさん:《2000円投げ銭しました!》
名無しさん:や っ た ぜ
シルクロード:?!
「いきなりでごめん……ってシルクロードさん?!」
「あら、シルクロードさんも見ていたのですね。感謝ですわ」
「え、えとあの投げ銭ありがと!」
「今日の射撃は少しブレそうですわね?」
「が、頑張る……」
いつも以上に甘い雰囲気を漂わせながら配信は順調に進んで行く。だが少し不穏な足音は少しづつ迫っていたのだった。
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