女王蜂の殺戮劇
無事に見つかることなく追跡が成功すると、女王蜂の姿と、それに対峙する討伐隊が見える。だが女王蜂も前とは異なっていた。
「前よりデカいし翅が輝いてない……?」
「見てる分には綺麗ですわね」
サイズは一回り大きくなっており、普通に行けば遠目からでもはっきりと分かる。翅は虹色に輝いており神々しく見えた。
討伐隊はバラバラになって密集しないように動き始める。その理由は直ぐに明かされた。女王蜂は討伐隊が動いた直後に凶悪な針を突き出して高速で突進した。
それによって運が悪かったプレイヤーの一人が串刺しにされてポリゴンの欠片となって消える。
「絶対に固まるな! あれが来るぞ!」
「相殺か回避して!」
そう叫ぶ声と同時に翅が動かされると、黒い蜂が女王蜂の周囲へと集まる。集まって来たのはニャイアル達が戦ったものよりは小さい。
翅の輝きがさらに強まると一斉に集まったそれらは討伐隊へと、弾丸のように広範囲に突進をした。
「……ヤバくない?」
「えぇ、これはかなり危険ですわ……当たらなかったりスキルなどで倒された蜂は消えていますが……」
「僕ならギリギリ相殺は……無理」
「幸い密度は無さそうなので回避は可能ですわね」
既にこの時点で討伐隊は半分以下になっていた。生きているのは防御力が高い、回避が上手い、スキルで相殺出来た数人になっている。
「まだ諦めるな! 最低でも蜜だけ回収しろ!」
「む、無茶言うな!」
「結果を残さないと俺らが割を食うぞ!」
まだ討伐隊は諦めることなく攻撃の隙を窺っていた。
「蜜って僕たちが前に王冠から取った奴……?」
「恐らくそうですわ、ですがあの状況で回収できる程簡単では無いと思いますが……」
「だよね……」
女王蜂はその間にも毒液を飛ばし、黒い蜂が使っていたのと似たような魔法を使って複数人を拘束しようとしたり、鱗粉のようなものまで飛ばしていた。
その度に討伐隊のプレイヤーは大ダメージか死亡し、十分ほどで全滅した。女王蜂はその後何処かに飛び去っていき、辺りは静かになる。
「想像してたより酷かった……」
「人数を増やしすぎるのも良くなさそうですわ、誰かに見つかる前に狩りに戻りましょうか」
「分かった」
依頼はまだ残っている、女王蜂とは反対の方向へと歩き出しながら標的を探す。敵と遭遇する頻度は上がっているがPKとの戦闘は一切ない。
「女王蜂でPKをするのが難しくなっていますわね、強力なプレイヤーも集まって来ているみたいですし」
「ま、それはそれで嬉しいけど」
「私はニャイアルちゃんが活躍する姿を見る機会が少なくなったので悲しいですわ」
「……サヤにならなんでも見せるけど」
「ふふ、早く終わらしてゆっくりしましょうか」
若干ニャイアルが恥じらいつつ移動する。その後ろを見る不審なプレイヤーが居ることも知らず。
「あの二人面白そうやなぁ……ウチの勘がそう言っとる」
そのプレイヤーは扇子を閉じ、目を細めたのだった。
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