異変
「僕たちしか居ない時ずっと耳元で囁いて来るのはどうかと思うけど……」
「ついやってしまいましたわ、ですが後悔も反省もありません」
「……程々なら良いけど」
「程々は難しいですわね……」
「どーして……」
修学旅行から一週間後、二人は手を繋ぎながら下校していた。帰って来てからはテストなどでゲームにイン出来てない、そのため今日は久し振りに遊ぶ日なのだ。
「そう言えば……女王蜂の討伐の話、そろそろ動き出しそうですわ」
「何かあったの?」
「えぇ、メイド隊やレインさんの戦力がそろそろ私たちが居る街にギリギリで来れる位には上がって来たと言う報告が来ましたわ」
「レインさんって……あの槍士の女の子だっけ?」
「そうですわ、どうやらシルクロードさんが色々指南をしているそうです」
「なら僕たちも準備しておかないと」
「私とのデートも忘れないでくださいね?」
「わ、分かってる」
まだ筑紫と紗夜が恋人同士になったことはお互いの親しか知らない。なおその報告の時はどちらも二つ返事で了承されたのだった。
二人は諸々を済ませた後、街で再会する。
「配信の予定は?」
「明日ですわ」
「ん、なら今日は自由に動けるね」
「どうしますか?」
「とりあえず冒険者ランクを上げないとクランが作れない……だっけ?」
「合ってますわ、今はCランクなので次で作れるようになりますね」
「なら依頼受けに行かなきゃ。ウルルを呼び出して……よし」
「ガゥッ!」
ニャイアルたちは冒険者ギルドに行く途中、街の雰囲気が重くなっていることに気がつく。聞こえて来る会話を整理すると一つのことが分かった。
「女王蜂の被害が拡大しているようですわね……」
「討伐隊も何回も返り討ちになってるって聞こえたけど……僕たちも急がないと」
「焦りは禁物ですわ、ですが悠長にしていられませんねこれは」
目的地に着くと、依頼を取る場所には大きな紙が貼り出されていた。そこには女王蜂の姿が描かれている。
どうやら正式な依頼として出されたようだ。
「報酬金五百万……?!」
「それに冒険者ランク一つ上昇……益々何度も討伐隊が組まれるのが納得ですわ」
「確かに強かったけど……まさかまた強くなったとかじゃないよね?」
「……あり得ますわ、こうなった以上は情報収集もしなければなりませんわ……」
「面倒だけど……」
「とりあえず一度外に行かないと、討伐隊がさっき向かったって聞こえたし」
「なら早く行きましょうか」
それぞれ依頼を受けて街の外へと出る。そうすると景色に変化が起きていた。
「花が枯れてますわ……」
「なんか甘い匂いもする……って何か来る」
「ワゥッ?」
ニャイアルが見た方向から、黒く変色した蜂が羽音を立てながら襲いかかって来た。
「明らかに異常ですわ……」
「女王蜂の仕業……? さっさと倒して奥に進まないと」
「ガゥッ!!!」
黒い蜂は身体を縮こませ、赤いオーラに包まれる。そしてそれぞれ武器を構えて戦闘が始まったのだった。
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