修学旅行は甘酸っぱく? その7
「おはよ……」
「おはよう御座います、筑紫ちゃん」
遂に自由行動の日がやって来た。時間は朝十時から夜の八時までだ。札幌市で観光をし、時間までにホテルに戻って来なければならない。
その日の朝、紗夜と筑紫は朝食を食べながらこれからのことを話していた。
「下調べ何もしてない」
「実は私も調べてませんわ、せっかくですから行き当たりばったりで観光をしてみようと思いまして」
「……ま、なんとかなるでしょ」
「きっと楽しいものになりますわ」
そこからは色々済ませてバスに乗り、札幌まで移動した後に自由行動が始まった。だが既に一つ問題が起きていた。
「かなり遅れましたわね……」
「渋滞のせいで一時間以上遅れてる……」
「昼食を食べれる場所を探すのが良さそうですわね」
「だね、何食べる?」
「札幌ですから……ラーメンか海鮮丼ですか?」
「どっちも美味しそう……」
「えぇ、幸い少し歩いたらありそうなどちらも雰囲気なので、良さそうなお店に行きましょか」
「はーい」
筑紫は建物の大きさに驚きながらも耳を研ぎ澄ませ、紗夜は歩き慣れた様子で探している。
「やっぱり都会は音が多いなぁ……」
「筑紫ちゃんのその耳は数年前まで全ての音を拾ってしまって辛そうでしたわね……」
「薬とかである程度抑えてたからマシにはなってたけど……辛いのは辛かった」
「こんな可愛らしい耳なのに困りますわね」
「可愛らしいって……ま、今はオンオフが自分で出来るようになったから良いけど」
十二時を少し過ぎた頃、二人がほぼ同時に海鮮丼屋を見つけて入った。筑紫は少し疲れたのか隣に座って紗夜に寄りかかっている。
「あら、珍しく隣に来ましたわね?」
「ちょっと疲れたから」
「まだまだ観光はこれからですわよ?」
「……頑張る」
「歩けなくなったら私がおんぶしますから言ってくださいね」
「さ、流石にそこまではいかないって!」
「私の気分次第でもしますわ」
「えぇ……?」
「ふふ、とりあえず注文を済ませましょうか」
「はーい、僕はこれ」
「私はこれですわ」
彼女たちの指が指した先は同じ海鮮丼だった。これには紗夜も少し驚く。
「あら……全く同じものになるのは思ってませんでしたわ」
「……ワザとじゃない?」
「違います、ですが少し嬉しいですわ。好きな人と同じものが選べるのは」
「ん……って撫でるなっ」
「申し訳ありませんわ、つい」
「人目はそこそこあるから……」
「ですが私に寄りかかってる時点で人目は気にしていないものかと思いましたわ」
「あれは……別だから!」
「やっぱり筑紫ちゃんは可愛らしいですわね」
「うぅ……は、早く店員さん呼ばないと」
「分かりましたわ」
それから十分後に海鮮丼が届き、筑紫が少し苦戦しながらも食べ切った。
「「ごちそうさまでした」」
「次はどこに行きましょうか」
「テレビ塔、だっけ? そこ行ってみる?」
「ではそこに行きましょうか」
そしてまた楽しそうに観光を再開したのだった。
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