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修学旅行は甘酸っぱく? その5

散々筑紫がくすぐられた次の日、その日の最初の目的地は釣り堀だった。


「今日は釣り体験ですわ」


「昼飯の豪華さにも繋がるんだっけ」


「えぇ、私たちが釣った魚が出ますわ」


「面倒だけど頑張らないと……」


「うっかり筑紫ちゃんが釣り堀に落ちないか心配ですわ……」


「そんなミスする訳ないでしょ、風が強い訳でも無いし」


「用心するに越したことはありませんわ」


筑紫が若干ジト目になりながらも、二人で並んで貸し出された釣竿を垂らす。周りには勿論大勢の同じ学校の生徒が居る、彼女たちの釣竿に魚が来るかは怪しい。


「中々来ない……」


「まだ十分程度ですわよ? 釣りは我慢が基本ですから頑張りましょう?」


「はーい……」


更にしばらく待っていると、運良く紗夜の釣竿に魚が食いついた。見える限りだとサイズはそこまで小さくはない。


「来ましたわ! 逃がすものですか!」


「頑張って!」


少しづつ魚は紗夜に近づいて来ている。筑紫も応援しながら見ている。やがて魚の抵抗が終わり、釣り上げることに成功したのだ。


「やりましたわ」


「おめでと、僕も釣らないとなぁ……」


「筑紫ちゃんならきっと出来ますわ」


「だと良いけどね」


釣れた魚を見て多少なりともやる気が出たのか、筑紫は少し集中し始める。魚が近づいて来る音に注意しながら、しっかりと釣竿を握っていた。


そして遂にその時はくる。


「……来た! って大きいかも!」


「運が良いですわ! 筑紫ちゃんなら釣れますわよ!」


「が、頑張ってみるけど僕が引っ張られそう……!」


食いついた魚はこの釣り堀に居る中でトップクラスで大きい。筑紫の筋力ではこのままでは危ないだろう。

加えて紗夜が危惧していた事態が起こった。


「や、やだぁっ?!」


「筑紫ちゃん?!」


釣竿を離せば良かったが、迷ってしまった結果バランスを崩して釣り堀に落ちようとしていた。筑紫は目を瞑って悲鳴をあげた。


彼女の体はそのまま釣り堀に……落ちることはなかった。


「言った通りでしたわね、大丈夫ですか?」


「あ、あれ……落ちてない……?」


「ほら、まだ魚は逃げていません、まだチャンスは残っていますわ」


「わ、分かった!」


紗夜が後ろから手を伸ばして、抱き抱えるようにしてギリギリで助けたのだ。混乱する筑紫だが、言われた通り魚がまだ逃げてないことに気付き力を込める。


「でもやっぱ一人じゃ」


「私が居ますわ!」


紗夜は片手で筑紫を支えつつ、もう片方の手で釣竿を握った。そうすると魚が少し二人に近づく。


「もう少しですわ、頑張ってください!」


「う、うん!」


数十秒後、筑紫の横には釣られた魚が横たわっていた。見回りに来た釣り堀の管理人が言うには、この場所でもかなり大きい魚らしい。


「ふふ、格好良かったですわ」


「紗夜も……カッコよかった。もうダメかと思ったし」


「感謝しますわ、ですが筑紫ちゃんが釣竿を離さなかったおかげです。今回は筑紫ちゃんのお手柄ですわ」


「あ、ありがと……」


「褒められることにも慣れないといけませんわね?」


「慣れるわけない!」


「そこも可愛い所ですが……」


「うぅ……」


そうしてその日の筑紫たちの昼食は、それなりに良いものになったのだった。

読んで頂きありがとうございます

誰だ数話で修学旅行終わるって言った作者は!

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