修学旅行は甘酸っぱく? その3
修学旅行二日目、筑紫と紗夜は眠い目を擦りながら朝食の会場へと向かった。なお紗夜が居なければ寝坊は間違いなかった。
「今日ってどこ行くんだっけ……?」
「水族館の後にベアマウンテンのツアーですわ、今日も移動が多いですね」
「うぇ……また移動……」
「北海道は広いですから、寒かったらいつでも言ってくださいね。私が暖めてあげますわよ?」
「自分で何とかするから」
「遠慮しなくて良いのですのよ?」
「してないから!」
「ふふ、恥ずかしがってる姿も好きですわ」
「それもしてない!」
そうこうしている内に水族館へと着いた。二人は普段見れない魚を見て興味を持ったり、写真を撮っていた。
「あら、珍しく写真を撮るのですね?」
「だって修学旅行とかじゃなきゃこう言う所行かないし」
「将来は沢山旅行に行きましょうね、新婚旅行等は想像するだけで楽しみですわ」
「……まだ付き合うって決まってないでしょ」
「筑紫ちゃんも想像してみたら案外楽しめるかも知れませんわよ?」
「そんなことあるわけ…………な、ないから」
「……ふふ、別の場所にも向かいましょうか」
次はドクターフィッシュが泳いでいる水槽に手を入れられる場所があった。列は出来ているが少し待てば大丈夫だろう。
「あちらにも行きましょう?」
「並ぶの……?」
「きっと楽しいですわよ?」
「んー……分かった、面倒だけど並ぶ」
「良かったですわ」
数分後にようやく筑紫たちの順番になった。最初に手を入れるのは紗夜だ。
「あら……あまり来ませんわね。ですが不思議な感覚ですわ」
「角質とか食べるって聞いたことあるから、それだけ手が汚れて無いってことじゃ?」
「違う気もしますが……筑紫ちゃんもどうぞ」
「ん……」
筑紫が水槽に手を入れた瞬間、中に居たドクターフィッシュが一斉に手に群がった。手はほぼ埋め尽くされてしまう。
「うわっ?! なんで?!」
「折角ですので写真を撮りますので動かなさいで欲しいですわ」
「はやく! はやく!!」
「はい、もう大丈夫ですわ」
「ふぅ……びっくりしたぁ……手洗いたい」
「そこに手洗い場がありますわ」
「どうしてこんなに……」
「面白かったですわ」
「ちょっと怖かったからあれ! 二度とドクターフィッシュに近寄らない……」
「相変わらずの怖がりですわね?」
「ん……仕方ないでしょ……」
筑紫は手を洗いながら紗夜に文句を言ったが、頭を撫でられて直ぐに大人しくなった。また時間はあっという間に過ぎて行き、バスへと戻る。
「ベアーマウンテンって熊が沢山居る山だよね……? 急に飛びかかってこないよね?」
「……ツアー中のバスはとても揺れるそうなので私がしっかり守りますわ」
「答えになってないから!」
「ただの熊ですわよ?」
「そうだけどそうじゃない! 夏休みの時にやらされたホラーゲームで、熊の化け物出て来たから少しトラウマになってるから……」
「……ファイトですわ」
「……守ってくださいお願いします」
「ふふ、分かりましたわ」
その後ツアー中の間ずっと紗夜にぴったりとくっつきながら、手で目を隠してもらっていた筑紫の姿があったと言う。
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