鬼ごっこ その5
「もう終わりだ! その速さもアイテムのお陰だろう、大人しくぐふっ……小癪な!」
「はぁ……はぁ……早く帰ったら?」
「まだ終わりではありませんわ」
ニャイアルは後ろ向きでの狙撃を成功させたが出たセリフは本心だった。サヤも冷静にしているがスケルトンキング戦の精神的疲労も重なり苦しい。
とは言っても追いつかれてはいない。適度に距離を取りつつ攻撃にも対応出来ている。
「チッ……全員でタイミングを合わせて回避不能のスキルの波を作りますよ」
「お前ら聞こえてたか! 集中しろ!」
「まずっ……」
「(目的地まであと少しと言うのに……最悪私が盾になるしかありません)」
「「《フライング……」」
「「《強……」」
「ウルル、サヤを守って!」
「ガゥッ!」
召喚石からウルルが飛び出す。サヤはニャイアルのしようとしている事が理解出来ない。
「ですが」
「何とかする!」
「「……ハイスラッシュ》」」
「「……投擲》」」
サヤは困惑しつつも障壁を貼る。そしてフライングハイスラッシュよりもダメージが少ない強投擲が飛んで来ている方に走る。
一方ニャイアルは壁際へと走る。スキルが飛んで来ない訳では無いが覚悟を決めて勢いを付けた。そして……。
「ぅぅぅぅう!」
「おいおい……当たってねぇじゃねえかよ!」
「確かにある程度の敏捷値と軽業等のスキルを持っていたら可能ですがまさかやるとは……」
そして声にならない声をあげながら壁を駆け上がったのだ。半分涙目になりながらもフライングハイスラッシュはギリギリで真下を通り過ぎる。だがサヤを庇ったウルルは倒されてしまう。
「キャンッ……」
「ありがとうございます、ウルル」
召喚石に戻るウルルに礼を言いながらニャイアルの無事を確認する。
「ニャイアルちゃん、着きましたわよ」
「やっと……うぅもう二度とやりたくない」
「はぁっはぁっ……!」
やー子が息を切らしながらも少し開けた空間へと着いた。ニャイアルたちもそこで止まり、クランのプレイヤーたちと向き合う。
「もう終わりだ!」
「やっと止まってくれましたか」
「ノーデルさんまだ……?」
「そのようですわね……不味いですわ」
この作戦の要であるノーデルの姿が見えない、このままでは作戦が崩壊してしまう。
「簡単にやられてたまりますか!」
「生産職と雑魚二人で何が出来る」
「んー……一人道連れ?」
「出来たら良いですわね?」
男たちはそれぞれ武器を構えていつでも戦える準備をした。ニャイアルたちも満身創痍ながらも覚悟を決める。
「(早く早く……)」
「(ノーデルさんならきっと道を覚えている、はずです! 多分!)」
「《ハイスラッがふっ」
「待たせたな、少し迷ってしまった」
「ふぅ……待ってました! ノーデルさん!」
「間に合って良かったですね……」
「うん、本当に」
「《ハイスタンプ》」
「何でノーデルがっ」
「が、勝てる訳がっ?!」
「ルール無用の闘技場だ、逃すわけがない」
ノーデルは戦鎚を振り回して数人吹き飛ばす。遂に鬼ごっこから蹂躙劇へと変わったのだった。
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