初配信その1
そんなこんなで狩場へと着く。いつも通り前の索敵はニャイアル、後ろのカバーはサヤがしつつだがしっかりとニャイアルの方も見せなければならない。
「《魔力探知》……十五メートルしか今は無理か、後ろから一体前からも一体」
「《小火の祈り》」
「《チャージショット》」
火が飛ぶ音と魔弾が飛ぶ音が同時に聞こえる。魔弾はしっかりと熊の頭に当たり、魔力探知で引っかかった方は火で炙られていた。
「この武器良いね、使い易い」
「私の方も目に見えて火力が上がっていますわ」
そうして彼女たちは丘の下に出来た、人二人分が入れる空洞を見つけそこに隠れる。
「弓矢持ってるゴブリンか……余裕余裕」
「当たりましたわね」
気付かれる前に処理することに成功する。コメント欄も少し盛り上がっているようだ。
名無しさん:魔銃士ってこんなに当たるの?
名無しさん:当たらんぞ、フレの一人二丁拳銃だけど三発に一発当たれば良い方らしい
名無しさん:これスキルの補正あり?あってもエイム力高いぞ
名無しさん:憧れるわぁ……
当の本人はコメント欄を確認していない為、気付いてはいない。近くまで来てしまったり撃ち漏らした敵はサヤが小火の祈りで倒していく。
近接が居ない二人組だが、現実では十年以上の付き合いなのである程度相手の考えてることは分かるのだ。それにサヤはずっとニャイアルを緊張させないように注意しているため、ニャイアルと同じくらいには疲れるのだ。
「二百メートル射撃……この地形ならいける」
「最大射程は二百五十メートルですが……いきなり百メートルほど飛びましたわね?」
「折角だから試してみたくてね。リアルでもサバゲーでやらされたし」
二百メートル先にいる標的は恐らくスライムのことだろう。襲ってくるモブの中では最小だ。風もたまに吹くため運も絡む。
「あと少し右で……下げて……よーし。すーはー……」
(まぁ大丈夫でしょう)
コメント欄も流れが止まる。そしてニャイアルは微調整を終えて、ついにトリガーを引いた。
「……当たったぁ!」
「お見事ですわ!」
魔弾は小さいスライムの体を貫き、スライムの体はポリゴンの欠片となって消えていく。コメント欄も拍手で埋まっていた。しかしこれだけ大きい声を出すと……。
「サヤ前!」
「しょ、障壁を貼りますわ!」
前から熊が接近し、今にも二人纏めてかぎ爪で攻撃しようとしていた。急いでサヤは武器の効果で使えるようになった火の障壁を貼る。
振り下ろされたかぎ爪は障壁に阻まれ、逆にダメージを負っていた。怯んだ隙に頭を撃ち抜き、事なきを得た。
「危なかったぁ」
「二人だとこう言うことがありますわね……」
「少し移動しよっか」
「分かりましたわ」
これ以上ここに留まるのは危険だと判断し、その場を立ち去る。後ろから二人を追う影に気付かないまま、だが……。
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