洞窟都市と再会の二人
「一回解散?」
「そうですね、大変名残惜しいですが」
「僕をガン見して言わないで……?」
「無理です」
「仲が良いようで私は嬉しいですわ」
「ワゥッ!!」
街に入った彼女たちはここで解散することにした。この街の名前は洞窟都市ギアンツ、文字通り洞窟の中にあるのだ。
道の舗装はされてなく、奥には大きな屋敷が立っている。プレイヤーの通りも多く、鍛冶屋が多い。それにNPCの店には小さい身長で太い髭が生えている種族、ドワーフが居た。
プレイヤーも不思議と通常の街ではあまり見なかったドワーフが多い。それとこの街より奥は無いようだ。
「どする? 僕たちの武器更新はしたいけど……」
「ですが私とウルルはドロップ品で強化出来ましたし……残るはニャイアルちゃんですね」
「僕の武器かぁ、ウェポンチェンジ後の武器はそろそろ変えたいけど」
そう話していると、前から見覚えのある顔が見えた。そしてサヤは真っ先に反応する。
「あら、ノーデルさんですわ」
闘技場の女傑、ノーデルが何かを探しているように歩いていたのだ。彼女も気付いたのか、駆け寄って来た。
「サヤにニャイアルじゃないか」
「久し振りです、お元気でしたか?」
「あぁ、アタシは大丈夫さ。そこの友人も強くなったそうじゃないか」
「あはは……ノーデルさんには足元にも及ばない気がするけどなぁ」
「アタシも負ける訳には行かないからな」
「何か探していたようですがどうしましたか?」
「あぁ、ここ最近この街に一人友達の生産職を送ったのだが……うっかり開く予定の工房の場所を聞きそびれてな。メールや通話で聞こうとしたんだが何故か繋がらなくてな、困ってるんだ」
「ふむふむ……名前は何でしょうか?」
「やー子って言うんだが……知ってるか?」
「知ってますわ」
「やー子さんもこの街に来てたんだ」
「なら話は早いな、何か知ってることはないか?」
「いえ何も……」
「僕も聞いてないけど……頑張れば見つけられるかも。やー子さんの声は覚えてるし」
「……聴覚頼りで探すのか?」
「ニャイアルちゃんの耳は常人のそれとは違いますし行けるかもしれませんわね」
「とりあえず行くしかないな」
ニャイアルは歩きながら耳を澄ます、今回は注意して、関係のない音を除くようにしながらやー子の声を探す。
「ゲームでも出来るんだこれ……」
「このゲームに使われているシステムは、ニャイアルちゃんがパーティーで体験したあの空間と近いと聞きましたわ」
「ふむふむ……」
そうしていると数分後、遂にやー子らしき声を微かに聞き取ることが出来たのだ。それに加えて別の声も聞こえるのだ。
「……多分あっち!」
ニャイアルが先導してその場所に向かっていくと、更に近付くと会話内容も聞き取れる。
「困りますって!」
「いやいやだから入ってくれるだけで良いんですよ、うちのクランにね」
「入りません! 前線組とは二度と関わらないって決めたんで!」
明らかに普通の会話ではない。男の声は悪意に塗れており、良いものではない。
「急いだ方がいいかも、何か言い争ってる」
「不味いことになるかも知れないな、街中とは言え用心しよう」
「心配ですわ……」
危機感を抱きながらニャイアルたちは走っていくのだった。
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