配信準備
「って配信のこと忘れてた?!」
「ふふ、自分から言い出すなんて珍しいですわ。あーん」
「あむっ……だってやるって言ったし」
「食べ終わったらニャイアルちゃんの転職をした後に、説明と準備をしましょうか」
クレープを分け合いっこをしながらそんな会話をする。レベルが十になったので転職が教会で出来るのだ。ゆっくり食べ、ゆっくり動き出す。
教会は第一の街より巨大で、様々な神を模したらしき石造が幾つも建物内部に建てられいる。司祭に話しかけると転職出来るそうだ。
「あのー、転職したいんですけど」
「分かりました、資格も満たしております。一覧をどうぞ」
そう言われ、複数の職業が書かれた画面が表示される。そこには近接魔銃士、突撃魔銃士、狙撃魔銃士と言う名前が出ている。勿論彼女が選ぶのは狙撃魔銃士だ。
狙撃魔銃士
転職条件:初級魔銃士が10レベルに到達
職業スキル:【魔力探知lv1】【消音lv1】
説明:初級魔銃士の中でも、狙撃が得意な者がなる職業。ステータスには補正は掛からないがスキルは強力だ。
ニャイアルはポチッとボタンを押して、狙撃魔銃士になる。そして武器を買った物に入れ替えた。
「動きが板についてきてますわね」
「現実じゃここまで動くこともないからね」
「今度ビーチにでも行きましょうか? 場所も交通手段も全て私の方で用意出来ますわよ?」
「マジ? ならお願い」
(ふふふふふ、やりましたわ!)
「あとさっき言ってた配信についての説明お願い」
サヤの思惑はさておき、ニャイアルは配信についての説明を求める。
「先ずシステムについて説明しますわ。配信時は視聴者に私たち以外の声は基本的に聞こえませんわ。私たちから話しかけたり、同じパーティーメンバーになった場合は聞こえますのでそこは大丈夫ですわ」
「ふむふむ、他には?」
「連続で配信出来る時間は三時間まで、しかし投げ銭や延長アイテムを投げてもらうと伸びますわ。注意点として私たちはまだ未成年なので夜の十時までしか出来ませんわね」
「なるほどね」
「コメント欄等の表示は此方で色々弄れますわ。それをカスタムしたのがこれですわ」
「おー、良い感じじゃん」
シンプル過ぎず、画面の邪魔をしない程度に装飾がされていた。配信者側のコメント欄は消したり出したり出来るみたいだ。
「後は前に言ったようにボタン一つで出来ますわよ」
「大体分かった、はず」
「細かいことは私がやっておくので安心してくださいね。あ、挨拶はどうしましょう」
「挨拶か……視聴者も来るか分からないしその場で決める?」
「……(慌てるニャイアルちゃんを見るのも楽しいですし)そうしましょうか」
そしてサヤはボタンを押し、配信が開始される。
「始まった? とりあえず何しよう?」
「えぇ、そうですわね……」
サヤはニャイアルに見られないように、既に十人以上の視聴者が集まっているコメント欄に、このようなコメントを流した。
名無しさん:初見、初配信?
名無しさん:初見です
サヤ:初配信ですわ、目の前の娘は視聴者が来ると思っていませんので驚くと思いますわ。リアクションを楽しみにしておいてくださいませ
名無しさん:wwwww
名無し:このゲームの配信者勢って少ないから突発の初配信でも来ないわけねえだろwwwww
名無しさん:初見wwww
名無しさん:初見、お嬢様ロールプレイはただでさえ少ない配信勢にも居なかったような気がするな
「緊張しなくても大丈夫ですわ」
「ん……」
サヤに頭を撫でられ、嬉しそうにしてるところもバッチリ配信に写っている。
「よしよし……さて、挨拶でもしましょうか」
「えへへ……ってえ?!」
「バッチリ写ってますわよ?」
「早く言ってよ?! てか何で視聴者来るの?!」
「初めまして皆さま、サヤと申しますわ。職業は祈禱士の初心者なのでご容赦を願いますわ」
サヤはにっこりとしながらニャイアルを見つめる。焦りながらも遅れてニャイアルが挨拶を始める。
「え、えーと、ニャイアルです。狙撃魔銃士でしゅ、よろしくし、しま……ふ……」
しかし同様と緊張で噛み噛みになってしまった。
「基本的に配信方針はプレイ映像を垂れ流す感じで行きますわ、配信勢としてもこのゲームのプレイヤーとしても初心者向けですのでよろしくお願いしますわね」
コメント欄は可愛いと、初見コメに溢れている。
「ふふ、では早速狩場へと行きましょうか」
「分かったよ……噛んだ……」
一切顔を配信カメラに向けようとせずに歩き出す。その間はサヤがコメントを拾いつつ、話題を出しながら無言にならないように気を遣っていた。こうして初の配信は順調(?)な滑り出しを見せたのだった。
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