錬金術師は眠らない その7
「危ないですねっ!」
「《チャージショット》」
サヤが突き出された女王蜂の針をローリングで回避し、代わりに魔弾が飛んで行く。だが身を捩られ魔弾は当たらなかった。
「どう言う回避性能してるの……」
「流石に魔法の一部は当たるようですわね」
「ウルル、僕のカバー入って」
「ガゥッ!!」
寄ってきた通常蜂を処理していたウルルは即座に彼女の元へと駆けて行く。MP回復薬を飲んでいるニャイアルは女王蜂を睨んだ。
巨大の割には俊敏に動き、王冠を狙おうとしても何故か回避される。ブリーズショットでギリギリ掠った程度なのだ。
「《魔樹の祈り》」
「《ダブルショット》」
サヤが溜め時間に入ったのを確認して、ニャイアルは牽制としてスキルを使用した。ウルルも武器を構えて突進し、二発の魔弾と共に避けられてしまうが時間は稼げた。
女王蜂が飛んでいる地面から、トゲが生えた太くしっかりとした木の幹がその巨体を捕らえる。トゲでダメージも多少ながらも入っていた。
「そろそろMPが不味いですわ……」
「《ブリーズショット》《ボムショット》」
サヤのMPは半分を切っている。MP回復薬はニャイアルにほとんど預けている彼女は余裕はなかった。女王蜂はまだ拘束されている。
「え……? マジで言ってる?」
「これは勝てないでしょうね……」
「ワゥッ……」
驚いたことに寸での所で拘束から脱出し、一発目は尻尾に当たって二発目は空を切って女王蜂の後方で爆発した。
心が折れかけるが、ニャイアルの聴覚は謎の鳴き声を僅かに拾ったのだ。
「ピ〜ピ〜……」
「まさか女王蜂の……?」
ニャイアルの視界に、他に鳴き声を上げそうな敵は女王蜂しか居ない。だが何故今鳴いているのかが分からなかった。
(もしかして爆風で……? 確かにちょっとブレて真っ直ぐ撃ってなかったから近くで爆破したけど。弱点に当たったのかなぁ)
「ニャイアルちゃん、避けてください!」
「ん? ぅあっ?!」
ニャイアルが考えていると、サヤの警告と共に紫色の液体が飛んで来たのだ。咄嗟に避けたため当たらなかったが、攻撃パターンが変わったことを察する。
「ん〜……翅が弱点なのかな」
「翅ですか……?」
「うん、とりあえず今は回避しないと」
「そうですわね」
女王蜂は針をニャイアルたちに向け、複数の毒液を飛ばして来たのだ。サヤは距離が近かったからか多く飛ばされ、回避は困難になる。
「障壁を使うしかなさそうですわね」
その瞬間にサヤの体が緑色のオーラによって守られ、液体を防いだ。ニャイアルとウルルも避けて難を逃れ、武器を構え直す。
「サヤ、大丈夫?」
「えぇ、ウルルも大丈夫そうなので安心しましたわ」
「ガゥッ!」
女王蜂はニャイアルたちを威嚇するように翅の音を響かせ、液体は無駄だと分かったのか襲いかかったのだった。
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