錬金術師は眠らない その6
「準備はよろしいでしょうか?」
「うん、大丈夫」
配信直前、準備を終えたニャイアルはそう答えた。サヤも転職出来たのか、自信がある顔をしていた。ウルルもより一層もふもふとなった毛を震わせている。
配信開始ボタンを押すと、一気にコメント欄が流れてきた。そして初見の視聴者も多かった。最初の挨拶を終えた彼女たちは、早速本題へと入る。
「僕たちの目標は女王蜂の蜜の回収、出来れば討伐だよ」
「準備は出来る限りしましたが……私たちはかなりの紙装甲ですので油断は一ミリも出来ませんわ」
ちなみにSNS用に何故女王様へと挑むかはそれっぽいものに変えている。普段何をしているのか気になったのかニャイアルたちをストーカーしている輩も勿論いるが、メイド狙撃隊か有志によって処理されている。
花畑エリアへと向かい数分後、さほど時間はかからず目当ての女王蜂を発見した。ニャイアルはスナイパーライフルを構えると確認するように話しかける。
「最初は通常蜂の処理優先で良いんだよね?」
「えぇ、後ろから刺されては堪りませんから」
「じゃ、撃つよ。《煌撃》」
銃身が薄い赤色の光を纏いながら、その光は先端へと集まっていく。狙いは大量の通常蜂が集まっている中心だ。
「初めて見ますがどういったスキルなのでしょうか……?」
「多分見た方が早いよ? もうすぐ溜めが終わるから」
光が先端に集まり光り輝いた瞬間、それを纏った一発の魔弾は狙い通りの場所へと当たる。そしてその光は弾けたかと思うと、大量の光弾が周りの鉢を貫いて行った。
通常蜂はかなりの数を減らし、女王蜂への道も開けた。
「これは凄いですわ……」
「今はこう言う状況じゃなかったら使えないけどね」
「それでも頼もしいですわ、では行きましょうか」
「ワゥッ!」
サヤとウルルは立ち上がり、女王蜂も此方を視認した。
「私もお披露目を、《魔皇の祈り》」
サヤの背後に複数の小さなブラックホールのような物が現れ始め、全て現れるとそこから緑、灰、白の魔力の球体が残りの蜂へと襲いかかった。
「一日一回しか使えず五秒ほどしか続きませんが雑魚の処理には丁度良いですわね」
「追尾機能まで付いてる……」
女王蜂にも魔弾は飛んでいったが、少し痛そうにしただけで有効打にはなってなさそうなのだった。ウルルは範囲から漏れた敵を突撃で突き飛ばして倒している。
名無しさん:ナニコレ
名無しさん:明らかにこの時点で手に入るスキルじゃねえww
名無しさん:女王蜂かった
名無しさん:頑張れー!
これで現在近くにいる通常蜂はほぼ居なくなった。だが切り札を切ったため、コストであるMPの半分を支払っている。
「一発も外せない……」
「ウルルは離れ過ぎず、女王蜂以外が私たちに接近しないようにしてくださいね」
「ガゥッ!!」
こうして女王蜂との戦いが始まったのだった。
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