錬金術師は眠らない その3
「それはとても不味いですわね……」
「治す方法はあるの?」
「今探してる〜……」
サヤは頭を抱え、ニャイアルも少し不安気に凛林を見ている。凛林は様々な薬品や道具を全て引っ張り出して焦りながら作業をしていた。
何故こうなったのかは一日前へと遡る。ニャイアルたちは起きた凛林の様子を見に行くために出店地帯へと戻っていた。
「おはよう〜……」
「おはようですの」
「おはよ」
「ん〜……もう一回寝て良い〜?」
「寝過ぎは健康に悪いですわよ?」
「また三時間待たないといけない〜……」
そんな会話をしつつ一旦解散して狩りへと向かった。冒険者ギルドで受けられる依頼の最大数を受けて探索しつつ対象を探して行く。
「見っけ、花の蜜とか結構手に入るね」
「えぇ、ここは私たちのようなプレイヤーからすればかなり有り難い所ですわ」
「僕はしっかりと狙いつけないと外しそうになるけど……」
「ワゥッ」
倒した花の魔物、マーダーフラワーから蜜を舐め終わったウルルを見つつ警戒を続ける。問題無し、と判断しようとした所でまた一つの悲鳴が聞こえたのだ。
「またでしょうか……?」
「サヤにも悲鳴聞こえたの?」
「聞こえましたわ……向かいますか?」
「……見るだけ見よ」
「分かりましたわ」
本日二回目となる悲鳴だが凛林の時と違ってかなり大きく、間に合いそうにない感じだった。ニャイアルたちはその場に向かうと案の定、プレイヤーが吹き飛ばされながらポリゴンの欠片となる瞬間だった。
「サヤはちょっと待ってて」
「……? 分かりましたわ」
そしてニャイアルは街で聞いた噂が頭によぎる。身をかがめて、念のためにフードを被った隠密性能を上げてからさらに近寄るとこの惨状の犯人が見えた。
(やっぱり女王蜂じゃん……)
そこには巨大な毒針にプレイヤーをぶら下げ、金色の毛が生えている八メートルはあるだろう蜂だったのだ。周りに蜜を運んでいる通常の蜂の姿もある。
蜂の巣は無いが代わりに女王蜂の頭の上に王冠があり、その中に蜜が貯められていた。
「出来れば蜜を回収してみたいけど……無理かな」
力量差を考えて即座に身を引くことにした。そしてサヤの元へと無事に戻る。
「何がありましたか?」
「プレイヤーを瞬殺する女王蜂、頭に王冠あってその中に蜜を貯めてた」
「……逃げて正解ですわね」
「出来れば戦いたくないけど……サヤは?」
「私も賛成ですわ、女王蜂は避けながら狩りはしましょうか」
「だね」
そうしてその日は女王蜂から逃げつつ依頼を完了していった。そして次の日、二人がログインした瞬間にサヤへと凛林から緊急の連絡が入る。
駆け付けると凛林が深刻な表情でこう言った。
「寝れなくなった」
と……。
読んで頂きありがとうございます。ブクマありがてえありがてえ……