錬金術師は眠らない その1
「一部の花は採集できそうでわね」
「だね、使い道は?」
「回復と状態異常を治す効果がある草花が多く取れますわ」
採集していると途中で出したウルルとニャイアルは悲鳴のような声をを聞き取った。少し離れているが走れば時間はかからないだろう。
そして遅れてサヤもその声に気付いた。
「……どうしましょう」
「助ける?」
「聞き覚えがある気がしますわ。行きましょうか」
全力疾走で向かうとパジャマにも見える装備を着た少女がダメージを負いながら尻尾の針から毒々しい液体を垂れ流している複数の巨大な蜂に追い詰められていた。
「これは無理かも……」
「凛林さん?! ニャイアルちゃん助けられますか?」
「任せて、ウルルも二匹相手にしといて。《チャージショット》」
「ガゥッ!」
ウルルは二匹の翅を切り落とし、ニャイアルは頭を狙って撃つ。撃たれた蜂はそのまま撃ち抜かれて倒された。
ウルルもトドメを刺して戦闘は終わる。サヤから凛林と言われた少女は回復薬を飲みながら立ち上がった。
「もうダメかと思った〜……サヤさんと誰ですか〜?」
「ニャイアルだよ」
「ニャイアルさんありがとうね〜……」
「サヤのフレンド?」
「えぇ、私が初期からお世話になっている錬金術師のプレイヤーですの」
「よろしく〜……」
全体的にふわふわとしているが装備も持っていないしパジャマも防具としての役割を果たせているのかは疑問が残る。
「ん〜? 装備が無いから不思議〜?」
「う、うん」
「わたしには精霊さんが居るからね〜……ふぁぁ……」
「凛林さんは精霊を使って攻撃をします、ですがデメリットで装備が持てないと言うことですわ」
「そうだよ〜……欲しい草花があったから取りに行ったら油断してグサって〜」
「私たちが通りかかって本当に良かったですわね……採集が終わるまで警護をしましょうか?」
「良いの〜……?」
「一度助けてその後放置は嫌だしね」
「ありがとう〜」
「ワゥッ!」
そのまま時間が過ぎ、途中魔物を撃退しながら凛林の採集が終わる。街まで送ると出店まで案内された。
「これとこれはお詫びの品〜……それとこっちは感謝料〜」
「両方回復する物にバフ薬……こんなに貰ってよろしいのでしょうか?」
「良いよ〜……ご贔屓にしてもらってるし〜」
「ありがと」
「ふぁぁ〜……」
「そろそろ寝る時間でしょうか?」
「うん〜……バフとこの子のためにもね〜」
「……?」
「種族の特性で三時間に一回三十分ほど寝なければならないのですが、その後は強力なバフや精霊が少し強化されますわ」
「なるほどね、結構使いづらい種族な気がするけど……」
「えぇ、ですが寝るのが好きなようで苦には感じてないそうですわよ?」
「そうなんだ……」
ちょっと羨ましいと思ったニャイアルはその気持ちを静かに仕舞うのだった。
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