少女散財中
「いらっしゃいませ……」
「色々見てくね」
「沢山ありますわね」
晴翔から言われた場所は前と同じように薄暗い場所だったが、魔山の姿と合間って逆に目立っていた。中に溶岩が詰まったような宝石や冷気を発し続けているイヤリング等高そうなアクセサリーが増えている。
「シュシュ……役に立ちましたか……?」
「うん、大分助かってるよ」
「良かった……」
そう聞くと魔山は少し声量が上がり嬉しそうにしていた。そして気になるものを一個づつ見ていき、悩みに悩んだ結果これを選んだ。
身隠しのチョーカー
防御力:2
効果:1日に1回10秒間のみ自分が透明化する、ただしその間は防御力が半分になる。
(属性攻撃強化も良かったけど……身を隠す手段がないと詰むしね)
小さいクリスタルが付いた迷彩柄のチョーカーを選んだ。値段は破格の三千Gである。サヤは茶色に輝くイヤリングを買い装備した。
「アクセサリーを変えると髪も元に戻りましたわね」
「ほんとだ」
「ふふ、今の状態も可愛いですわよ?」
「ん、ありがと」
「…………抱きついても」
「ダメ」
既に手を伸ばしていたサヤをギリギリで回避したニャイアルは次に行く場所を考える。
「次は防具だけど……僕は服とズボンと靴を変えるだけで良いかな。そこそこ性能良いし」
「防具……ですか……? なら向こうの……暑苦しそうなプレイヤーは……どうですか……?」
「えっと……あの人?」
「はい……」
「一つ気になったのですが……そのプレイヤーと晴翔さんと魔山さんは同じクランなのでしょうか?」
「そうです……人数は少ないですが……前線にあと二人……居ます……」
「分かりましたわ」
「てかあの人見たことあるんだけど……」
姿は半裸で髪が真っ赤な自由都市でニャイアルたちが防具を買ったプレイヤーだったのだ。今日は在庫処分ではないのか叫んではいないものの存在感はかなりある。
「名前は……」
「明月でしたわね。ではまた寄りますわ」
「またね」
「はい……ありがとうございます……」
明月の場所へと向かうと気づいたのか大きく手を振っている。ニャイアルたちの名前を呼ぼうとして口を開きかけたが周りのプレイヤーから睨まれ阻止された。
「前のお客さんじゃないか!」
「あーうん、魔山さんって人から紹介されて来たよ」
「あの魔山がか! ゆっくり見ていってくれ!! 今日は全品八万Gだ、値は張るが性能も良くなってるぞ!」
早速見てみると前と同じくコスプレ用の衣装のような防具が大量に置いてあった。メイド服からスーツまで何でもある。
ニャイアルが目を付けたのは黒い制服のようなものだ。
「それはリアルで見かけた長袖ミリタリーロリータを参考にした奴だ」
「これにしようかな」
「良いですわね、私はこちらにしますわ。折角なら色はお揃いにしたいですし」
サヤが選んだものは黒い浴衣だった。妖しげな雰囲気を纏っており、何処か惹きつけられる。
「上下合わせて十六万Gだ!」
「まだ懐は余裕あるね」
「私は少し心許ないですわ……」
支払い終えて二人は早速装備を変える。
「結構動きやすい!」
「これなら走り回れそうですわ」
ニャイアルは普段着ないような服を着て楽しんでいた。サヤも体を動かして動きやすいことを確認している。
だが一つ問題が起きていた。
「靴が絶望的に似合ってないな!」
「だね……早く買い替えないと」
「そうですわね……」
「実は靴も売ってあるんだが」
「「買います(わ)!」」
「そっちは金がないんじゃ」
「買いますわ」
「わ、分かった! 値引きは出来んがな」
二人は追加で八万Gを払いボアの靴から変えた。二人は礼を言って出店地帯を出る。
「二人で写真でも撮りましょうか?」
「だね」
その後は装備の性能確認を二の次にしてカフェの個室で写真を撮ったのだった。
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