外伝サヤ その1
ニャイアルが転職や新たな武器を買っている時、サヤも己の強化のために第三の街でとあるプレイヤーを探していた。
実は彼女はニャイアルがログアウトした後も一人でレベル上げやプレイヤーとの交流をしていたのだ。主な深夜帯にやっているせいかエリアも暗くなっているため暗視と言うスキルを取らざるおえなかった。
そしてそこでフレンドになったプレイヤーの一人、錬金術師の凛林がやっている出店へと出かけたのだ。
「ふぁぁ……」
「やっていますでしょうか?」
「サヤさんだ〜……やってる〜」
喋り方はどこか気の抜けるような感じで服装も遠目から見れば寝具と間違えそうなものだった。いつも眠たそうにしているが稀に本当に寝ている時がある。
「ロックバードに三人で挑むことになりましたわ」
「ん〜、相性悪いね〜……」
「何かないかとここまで来ましたわ」
「ちょっと待って〜」
近くにある鞄からガサゴソと何かを取り出すと、それは深い青色の液体が入った小瓶と薄らと黒煙が漂っている赤色の柔らかい球体だった。
「液体の方は一分だけ魔法の射程が凄く伸びる薬〜、もう片方はダメージはそんなにないけど投げて当てれば相手をダウンさせられる爆弾だよ〜。ふぁ〜……」
「買いますわ」
「は〜い」
代金を支払い終えると眠たかったのか凛林は眠りについた。この辺りでは暗黙のルールとして彼女が寝ている時は静かにするらしい。
サヤは一旦状況を整理するためにステータス画面を開く。
名前:サヤ
種族:エルダーエルフlv9 職業:森の祈祷師lv10
HP:110 MP:300
筋力:8
頑丈:11
器用:25
敏捷:22
精神:30
知力:23
スキル:【通常祈祷術lv3】【祈祷術・森lv4】【移動速度上昇lv3】【MP消費減少lv2】【消音lv1】【鑑定lv2】【調合lv3】【暗視lv1】
特殊スキル:【先祖の加護・小】
SP:2
STP:0
装備:武器【紅葉のお祓い棒】頭【無し】体【魔蜘蛛の巫女服】腕【ボアの腕輪】脚【魔蜘蛛のスカート】靴【ボアの靴】アクセサリー【森護りし者のリボン】【魔宝小石の首飾り】
特殊スキルというのは種族レベルと共に成長していくスキルだ。特定の条件を満たさないと取れない。サヤが一人で戦える理由の一つはこれである。
サヤは転職一歩手前と言うことを思い出して街の外の砂漠エリアへと駆け出した。敵が単体で襲ってきやすく、PKが少なくなったからだ。
少しづつ警戒しながら歩いて行き、少し経つと前から何かが近づいて来る。
「来ましたわね。《恵の祈り》」
サヤは新しく手に入れていた魔法を使う。それは味方に当たれば回復効果があり、敵に当たればダメージとなる果物を複数放つと言うものだ。
効果はそれほど高くはないが、溜め時間は短い。砂から飛び出してきたワームはモロに喰らってしまいポリゴンの欠片となった。
普段はもう一回魔法を使わないと倒せないが、今回は運良く特殊スキルの効果の一つである低確率でダメージ増加が発動したようだ。
「レベルも上がりましたし帰りましょうか」
そして境界へと向かい、予め決めていた一つの職業を選ぶ。
自然の祈祷師
転職条件:森の祈祷師がレベル10以上に到達かつ、エルフ系統であること。
職業スキル:【祈祷術・地lv1】【精神強化lv1】【地属性強化lv1】
説明:森の祈祷師から更に高位の祈祷師となる。火属性を除く元の祈祷術はそのままに新しい祈祷術を身につける。
精神強化も今のサヤに取っては目から鱗だった。祈祷師・地は妨害と多少の攻撃が出来るものと書かれている。
転職し、満足したサヤは明日に備えるために一旦ログアウトしたのだった。