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ラノベ窟のヘヴィーな廃人  作者: 広江宇一
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第68話/五章-⑰

「この……ウンコ製造機がぁぁぁぁぁあ!」

薄暗い教室に銀髪少女の怒号が響き渡る――


純文学作家を目指すも挫折し、国内でも珍しい文学科を備えた高等学校『高村学園』に就職した和久井耀は、文芸部の顧問を任される。しかし、待っていたのは通称『ラノベ窟』。ライトノベルをこよなく愛する変人の巣窟だった。


新進気鋭の女子高生プロライトノベル作家に囲まれ、『ラノベ窟』の非常識な活動に翻弄されながら、耀は至高の作品を書き上げることができるのか――!?


【登場人物】

和久井耀わくいよう     高村学園常勤講師

那津川紗里緒なつかわしゃりお  執筆ジャンル:王道ファンタジー

紺野響こんのひびく     執筆ジャンル:男性向けラブコメ

ユピテル      執筆ジャンル:MMORPG中心

卍風理まんじふうり     執筆ジャンル:異世界転生モノ

小早川優奈こばやかわゆうな  執筆ジャンル:女性向け恋愛小説


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


☆一日一話、朝11時に定期更新☆


↓完結済みの過去作品もどうぞ↓

『国宝級イケメンの俺様が幼馴染彼女のストーカーに襲撃されたら、稀代のブサメンに生まれ変わっていた件 ~かくも人生は美しい…… ※ただし、イケメンに限る~』

https://ncode.syosetu.com/n0781ha/

『JK空海、吉備路を駆ける』

https://ncode.syosetu.com/n2890gw/


「ヒャッホー☆」


 満月の下をデッキブラシにまたがった二人が滑空する。無防備にも生身で大空を蛇行しながら飛ぶ恐怖に、普段ならブルっていただろう。

 しかし、今は目の前の画面から目を離せない。


「後ろでずっとパソコンを打たれてると気になるんですが……」

 今は一分一秒が惜しい……。


 この記憶が尽きる前に、全てを書き留めなければ……紗里緒の言った事……響の教えてくれた事……ツグミの好きなもの……優奈と話した事……風理の奇行……その全てを……。

 ――形として残しておかなければいけない!


 風理と会って、記憶の欠落は多少緩やかになっている。魔力の影響を受けているせいだろう。しかし、書き換えが止まっているわけではないと、本能が警鐘を鳴らす。俺はただただキーボードを叩く機械の如く、腕を動かし続ける。


「……すごい集中力……」

 風理の声も、吹き抜ける風の轟音も、既に俺の耳には届いていなかった。




 草を踏みしめる音で我に返った俺は、キーボードを弾く手を止め、画面から顔を上げる。


「風理……なぜここに……それに、その人は……?」

 気がつくと月は没し、陽が昇り、辺りは薄明かりに満たされている。


「おはよ……雲雀……」

 デッキブラシを抱えたまま座り込んだ風理が、眠気眼を擦り擦り応じた。


「……やっと……会えた……」

 唖然とした表情で突っ立っている雲雀に、俺はこれまでの経緯を語って聞かせた。




「そんな話……信じられませんよ……」

 逆の立場であれば俺だって、ただの狂人としか認識できないだろう。


「信じてもらわなきゃ、困る。ⅰAI」


「なぜその名を⁉」

 紗里緒の暴いたペンネームの秘密を、ここぞとばかりに突きつける。


「それに、魔女の風理と一緒にいるってのが、何よりの証明だろう? 嘘じゃないんだよ」


「信じられない……」

 そう洩らす雲雀だったが、信じざるを得ない様子は明らかだった。


「……では、和久井先生は、那津川家の親子喧嘩でとばっちりを喰らった挙句、風理の魔力暴走に巻き込まれて、過去を巡り、再び現在の時間軸へ戻ってきた、と……」


「もう先生じゃねぇよ……」

 改めて人の口から聞くと、ひどい目に遭ったと痛感する。


「……しかも、在りし日の総合文芸部を元通りに再興したいと考えている……」

 腕を組んで考え込んでいた雲雀は、納得しかねるように目を伏せた。


「そうだ」


「ドMですか?」

 おもむろに顔を上げた雲雀は、真剣な声で言い放った。


「放っとけ! 何かいいアイディアはないか?」

 意見が聞きたいのであって、感想を聞きたいわけではない……。


「そうですね……彼女たちの本質は変わっていないはず……心の奥底に眠る価値観……魂の矜持を揺さぶれば、あるいは……」


「魂の……矜持……」

 俺は知っている……あいつらが魂を燃やし、苦痛と暗澹あんたんの末に産みだした物語を……


「まずは、彼女たちに会うべきです。講師として再び教壇に立てるよう、手を尽くしますよ」

 ようやく平静を取り戻しつつある雲雀は、柔らかな笑顔を浮かべて申し出た。


「……だめなんだ。こっちの俺は教育実習そっちのけで執筆していた。大学も中退だ。だから、教員免許なんて持っていないんだ……」


「では、事務や用務員として……」

 俺はゆっくりと頭を横に振った。


 たとえ職員として高村学園に潜り込めたとしても、あいつらの顧問に就くことはできない。強引に言い寄ったところで、拒絶されるのは目に見えている。教員免許を取り直すか? いや、時間を掛けてしまっては、優奈を救えない……。詰んだ……今の俺では彼女たちに接触することばかりか……同じ空間にいることすらできない……

 いや、待てよ……同じ空間、か……


「雲雀……俺の些細な願いを一つ、聞いてくれないか?」


お読みいただき、ありがとうございます。

皆様の応援が執筆の糧です。


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