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ラノベ窟のヘヴィーな廃人  作者: 広江宇一
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第59話/五章-⑧

「この……ウンコ製造機がぁぁぁぁぁあ!」

薄暗い教室に銀髪少女の怒号が響き渡る――


純文学作家を目指すも挫折し、国内でも珍しい文学科を備えた高等学校『高村学園』に就職した和久井耀は、文芸部の顧問を任される。しかし、待っていたのは通称『ラノベ窟』。ライトノベルをこよなく愛する変人の巣窟だった。


新進気鋭の女子高生プロライトノベル作家に囲まれ、『ラノベ窟』の非常識な活動に翻弄されながら、耀は至高の作品を書き上げることができるのか――!?


【登場人物】

和久井耀わくいよう     高村学園常勤講師

那津川紗里緒なつかわしゃりお  執筆ジャンル:王道ファンタジー

紺野響こんのひびく     執筆ジャンル:男性向けラブコメ

ユピテル      執筆ジャンル:MMORPG中心

卍風理まんじふうり     執筆ジャンル:異世界転生モノ

小早川優奈こばやかわゆうな  執筆ジャンル:女性向け恋愛小説


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


☆一日一話、朝11時に定期更新☆


↓完結済みの過去作品もどうぞ↓

『国宝級イケメンの俺様が幼馴染彼女のストーカーに襲撃されたら、稀代のブサメンに生まれ変わっていた件 ~かくも人生は美しい…… ※ただし、イケメンに限る~』

https://ncode.syosetu.com/n0781ha/

『JK空海、吉備路を駆ける』

https://ncode.syosetu.com/n2890gw/


 頭を抱え続ける魔女の隣をすり抜けて、晴彦は奥の長椅子に腰かける少女に歩み寄った。


雷電らいで理事長。私と一緒に来てもらおう。学園の決裁業務が滞っていると、一部の理事から抗議が出ている……私が、理事長の職責について一から教えてやろう」


「……嫌だ……」

 晴彦の申し出を、ツグミはポツリと拒絶した。


「理事会を動かして、理事長の解任動議を発動してもいいんだぞ? そうなったら、父上と母上になんて報告するんだ……鶫……」

 既知の間柄らしい晴彦は、恥ずかしげもなく弱みを衝いた。

 ツグミは歯をきしませるしかない。


「そして、顧問の和久井先生。だめですなぁ。生徒の指導が疎かなようだ。君には文芸部は向いていない……そうだ、バスケットボール部の副顧問に変わってもらおう。ウチのバスケットボール部は強豪だから、学ぶことも多いだろう。放課後はみっちり練習。週末は遠征に付き添ってもらう。業務命令に従えないのなら、講師契約の打ち切りもやむをえまい、な」

 晴彦は傍らの校長に視線を投げる。そう言われてはぐうの音も出ない。


「……たしの……」

 それまで無言を貫いていた紗里緒は、


「私の部員に手を出すなあぁぁぁ!」

 制止を続ける響の腕をすり抜けて駆け出すと、晴彦の胸倉を掴み上げた。


「校長……どうやら那津川紗里緒は停学が希望らしい……」

 微塵も取り乱すことなく晴彦は、傍らの校長へ静かに告げる。


 その壮絶なやり取りに虚を衝かれ、呆然と立ち尽くしていた俺は、

「落ち着けっ!」

 我に返るや否や、紗里緒を羽交い絞めにして晴彦から引き剥がす。


「……情けない。作家の端くれなら、暴力ではなく言葉を使うべきだ……」

 乱れた服を直しながら晴彦は、ボソリと呟く。


 未だに掴みかかろうと暴れていた紗里緒だったが、叩きつけられた正論を噛みしめると、糸の切れた操り人形のように、その動きを止めた。


 断罪が終わったと見るや、風紀委員長が紗里緒の目の前に歩を進める。

 やっと思い出した……この女生徒は文芸部の部室で会った……


「御前崎先生の事……未だに恨んでるの?」

 紗里緒は絞り出すような声で風紀委員長へ問う。


 御前崎先生……それは精神を患った文芸部と総合文芸部の前・顧問の名……病気の原因は家庭問題に起因するものと相模原教諭より聞いている。しかし、一部の生徒が総合文芸部のせいだと思い込んでいるとも聞いていた。

 すべては晴彦の掌の上だというのか……


「……関係ありません。あなたたちの素行の悪さを風紀委員として看過できません。風紀委員会及び、生徒会の決定により、総合文芸部の活動を無期限休止とします」

 風紀委員長は表情を変えることなく、極刑を告げる。


「安心しろ。『DNP』だったか? お前のプロジェクトについても、文科省と版元には私から話をつけておいた。完全凍結だ。続けたければ学園の協力を諦め、個人で成し遂げればいい」

 とどめとばかりに晴彦は冷たく言い放った。


「……そん……な……」

 絶望の声を洩らし、目の前の長机に手をついた紗里緒は、辛うじて身体を支えているように見える。


 震えている。

 今にもバランスを崩して、膝を屈してしまうのではないかと思われた。


「……謝るのなら今だぞ」

 晴彦の言葉に顔を上げると、目の前の敵を睨みつける。


 逡巡している。憎しみをぶつけ続けながらも、焦点の定まらない琥珀色の瞳は、反発と謝罪の狭間で揺れる心中を如実に物語っている。


「だめよ! シャルちゃん! 謝っちゃダメ! あなたは間違っていないのだから!」

 響の叫びに目を見開いた紗里緒は、一つの答えを与えられたようだった。


「誰が……アンタなんかに……頭を下げるもんか……!」

 震えは止まっていた。しかし、精一杯絞り出したその声は、すでに後悔をはらんでいる。


「……そうか。残念だ」

 踵を返した晴彦は小さく手を挙げると、そのまま廊下へ消え去っていった。

 校長が小走りでその背中を追う。


「……今日中に必要な荷物を部室から出してください。明日の朝、鍵を返却して頂きます」


 短く言い渡した風紀委員長は、振り返ることなく部室を後にした。


お読みいただき、ありがとうございます。

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