第58話/五章-⑦
「この……ウンコ製造機がぁぁぁぁぁあ!」
薄暗い教室に銀髪少女の怒号が響き渡る――
純文学作家を目指すも挫折し、国内でも珍しい文学科を備えた高等学校『高村学園』に就職した和久井耀は、文芸部の顧問を任される。しかし、待っていたのは通称『ラノベ窟』。ライトノベルをこよなく愛する変人の巣窟だった。
新進気鋭の女子高生プロライトノベル作家に囲まれ、『ラノベ窟』の非常識な活動に翻弄されながら、耀は至高の作品を書き上げることができるのか――!?
【登場人物】
和久井耀 高村学園常勤講師
那津川紗里緒 執筆ジャンル:王道ファンタジー
紺野響 執筆ジャンル:男性向けラブコメ
ユピテル 執筆ジャンル:MMORPG中心
卍風理 執筆ジャンル:異世界転生モノ
小早川優奈 執筆ジャンル:女性向け恋愛小説
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週明けの終礼後、俺は校長室へと呼び出されていた。
朝から嫌な予感が、死神の如く付きまとっている……。
「……どうやら虎の尾を踏んだらしいな」
「……はぁ……」
校長の思わせぶりな第一声に俺は、すぐに反応できず情けない声を晒した。
「……君たちが何をしたかは知らない……が、いい加減にしてくれ。理事会が動き出している。この後、那津川氏が訪ねてくると、連絡があった。総合文芸部の件で、と……」
晴彦の行動は機を見るに敏だった。
いや、ホテルに現れた時点で、根回しは終わっていたのかもしれない。
「そこで、だ。那津川紗里緒くんを説得したまえ。お父上の言う事を聞くように、と……」
いつになく真剣な眼差しの校長は、まっすぐに俺を見据えている。
「……私が言っても聞かないですよ。彼女には彼女の考えがありますから……」
説得なんてできっこない……。耐え切れなくなった俺は、早々に俯いて目を逸らす。
「そうか……ならば、どうなっても知らないよ。私は迫りくる火の粉を振り払うのみ、だ……」
背を向けた校長は鷹揚に手を振って、退室を命じた。
「……理事会は……マズい……」
校長室での顛末を聞き流していたツグミは短く呟き、落ち着かない様子で薄く唇を嚙む。
皆の注目は自然と一人の少女へ向かった。そんな視線に気づくことなく、机を睨みつけた紗里緒は立ち尽くしたまま、閉じた口をめいっぱい歪ませている。
その時、ノックされた扉が、声を返すより先に打ち開かれた。
姿を現したのは一人の女生徒。腕には、風紀委員の腕章が嵌められている。女生徒の後ろから大柄の男がぬっと姿を現す。那津川晴彦だった。傍らには校長の姿もある。
「作戦会議は済んだかね」
晴彦は薄笑いを浮かべながら、部室へ足を踏み入れた。
「では、風紀委員長。お願いします」
そう言って晴彦から目配せされた女生徒は頷き、ゆっくりと前へ進み出る。
「そこのあなた……本校の生徒じゃないですね?」
その鋭い瞳が優奈を捉えている。
「……え……ええっと……あの……」
嘘が下手な優奈の逸らした目は、誤魔化しようなく泳ぎ続ける。
「彼女は来年、本校の入学を志望する生徒です。先行して部活動に参加しているだけです」
うろたえる俺よりも早く、響が落ち着いて応じた。
「いつからこの部はインカレサークルになったのですか? 本校関係者以外の立ち入りが禁止されている事は、もちろん知っていますよね? 紺野部長?」
風紀委員長は毅然とした態度を崩すことなく、冷たく吐き捨てる。
「俺が……許可したんです。軽率な判断でした」
やっと状況を呑み込み、言葉を吐き出すも、遅かった。
「……紺野部長には責任者として、一週間の自宅謹慎を命じます」
一瞥を加えたのみで俺を無視した風紀委員長は、粛然と処分を言い渡す。
「この部の実質の責任者は私よ!」
苦々し気に顔を上げた紗里緒が、風紀委員長を睨みつけ、叫ぶ。
「そうだとしても、校則によって名義上の責任者が罰されるのは当然です」
当人には罰を与えず、周りからジワジワと締め上げていく……紗里緒には一番効くだろう。
「わかりました。この度は、申し訳ございませんでした。私の監督不行き届きです。謹慎が明けましたら、心を入れ替え、二度と同じ過ちを犯さないよう努めます」
今にも飛びかかりそうな紗里緒を左手で制しつつ、響は深々と頭を下げる。
しかし、話はそこで終わらなかった。
「……校長。お願いします」
続けて晴彦は、校長へ目配せする。
「……えぇーと、卍風理くん。キミ、入院の関係で出席日数が足りていないようだ。今後、放課後は補修となります。詳しくは担任の先生と相談するように」
校長は、『それ見たことか』とでも言いたげな、澄ました顔で俺を見た。
「サノヴァウィッチ!」
天を仰いだ風理は、意味不明な罵倒を残して膝から崩れ落ちた。
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