第45話/四章-⑦
「この……ウンコ製造機がぁぁぁぁぁあ!」
薄暗い教室に銀髪少女の怒号が響き渡る――
純文学作家を目指すも挫折し、国内でも珍しい文学科を備えた高等学校『高村学園』に就職した和久井耀は、文芸部の顧問を任される。しかし、待っていたのは通称『ラノベ窟』。ライトノベルをこよなく愛する変人の巣窟だった。
新進気鋭の女子高生プロライトノベル作家に囲まれ、『ラノベ窟』の非常識な活動に翻弄されながら、耀は至高の作品を書き上げることができるのか――!?
【登場人物】
和久井耀 高村学園常勤講師
那津川紗里緒 執筆ジャンル:王道ファンタジー
紺野響 執筆ジャンル:男性向けラブコメ
ユピテル 執筆ジャンル:MMORPG中心
卍風理 執筆ジャンル:異世界転生モノ
小早川優奈 執筆ジャンル:女性向け恋愛小説
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「なんだぁ! てめぇは!」
いまだ猛烈に暴れ続けるナンパ男が叫びを上げる。
加勢しなければ……
力の入らない身体を叱咤して、なんとか起き上がろうと試みるが、膝が立たない。
俺よりも先に、勢いよく立ち上がった男たちは、岩場の入口へ向かって駆けた。
「消えろやっ! ごらぁ!」
男の軽妙なストレートを難なくかわした黒マントは、
「風の精霊よ……」
なにやら口籠り、歌うように独特のリズムを刻みながら、身を捩らせた。
「ちょろちょろ逃げ回ってんじゃねぇ!」
その間も、ナンパ男のパンチが執拗に繰り出される。が、身体に触れることさえできない。
「……わが手に宿れ! 真空風牙!」
突如、やや前傾に腰を落とし拳を構えた黒マントから繰り出された一撃が、正確に男の鳩尾を抉る。叫んだ技名に反して、それは正に空手の中段正拳突きだった。
喰らった男は悶絶し、前のめりに崩れ落ちた。
「ヤロウ! やりやがったな!」
もう一人の大柄な男は、正拳突きを警戒して、ゆっくりと摺り足で間合いを詰める。
どうやら、武道の心得があるらしい。
「風の精霊よ……」
また、それ⁉
「ブツブツ言って、気持ちわりぃんだよ!」
明らかに隙だらけの黒マント目掛けて、男は野太い腕を振り下ろす。
「……拘束せよ! 風鎖拘禁!」
アームロックだった。
漫画でしか見たことのないような、見事な関節技が男に極められている。やはり、風の精霊が関係している要素は微塵も感じられない。
「いででででっ……」
苦悶の声を上げて大柄な男は倒れ込んだ。
「……さて、あなたを仕留めなかったのには理由があります。そこに倒れている男の人を担いで立ち去ってください。さもなくば、精霊の怒りに触れることになるでしょう……」
黒マントは表情を崩さぬまま、大柄の男へ忠告する。
「あででででっ! わかった! わかったから、折らないでくれ!」
「よろしい☆」
拘束を解かれた男は、倒れたままの男を担ぐと、振り返ることなく脱兎の如く逃げ去った。
「こらー!」
岩陰の向こうから叫び声がする。
覗いてみると、二人の若い警官が駆けている。紗里緒の通報によるものだろう。ナンパ男たちは、抵抗する余地もなく捕らえられていた。
その後、事情聴取が行われるも、連絡先の記入と簡単な注意だけで、敢え無く解放となる。
「先生、大丈夫ですか?」
優奈が心配そうな顔で覗き込む。
「あぁ、もう鼻血も止まった。大丈夫だ……それよりも……」
紗里緒と響に視線を送ると、一様に頷いた。
今、俺たちが考えていることは一つだ。
「「「なぜ、ここにいる⁉」」」
稽古でもしたかのように、同時に風理を見る。
「みなさんこそ、私に内緒で旅行なんて……ひどいです!」
斜に被ったとんがり帽子の奥から覗く碧玉の瞳が、怒りと悲しみに揺れている。
「内緒って……救急車で運ばれてから音信不通になったのは、風理の方でしょ?」
呆れ果てたように紗里緒は頭を振った。
「えぇ⁉ そうなんですか? おっかしいなぁ……」
駱駝色のサイドバッグを漁ってスマホを取り出した風理は、
「最後に充電したのは……三ヶ月くらい前……ですかね」
真っ暗なままの画面を差し出して、紗里緒に平謝りをはじめた。
「あなたが魔女の風理さんですね!」
そうか、優奈は初対面なんだっけ。どうやら紗里緒から存在だけは聞いているようだ。
「そうだけど……あなたは?」
「私、和久井先生の許嫁の小早川優奈です。今月から入部しました」
そう自己紹介して、ペコリと頭を下げる。
「これはこれは、どうもご丁寧に……こんウィッチわー」
風理もおずおずと頭を下げる、が、
「……って、許嫁⁉」
勢いよく顔を上げた風理は、俺と優奈を交互に見比べた。
「話せば長くなるんだ……ユピさんを待たせてる。一度、パラソルへ戻ろう」
誤魔化しも兼ねて、強引に帰りを促すしかなかった。
それにしても、音信不通だった風理は誰から合宿の事を聞いたのだろう……。
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