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ラノベ窟のヘヴィーな廃人  作者: 広江宇一
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第41話/四章-③

「この……ウンコ製造機がぁぁぁぁぁあ!」

薄暗い教室に銀髪少女の怒号が響き渡る――


純文学作家を目指すも挫折し、国内でも珍しい文学科を備えた高等学校『高村学園』に就職した和久井耀は、文芸部の顧問を任される。しかし、待っていたのは通称『ラノベ窟』。ライトノベルをこよなく愛する変人の巣窟だった。


新進気鋭の女子高生プロライトノベル作家に囲まれ、『ラノベ窟』の非常識な活動に翻弄されながら、耀は至高の作品を書き上げることができるのか――!?


【登場人物】

和久井耀わくいよう     高村学園常勤講師

那津川紗里緒なつかわしゃりお  執筆ジャンル:王道ファンタジー

紺野響こんのひびく     執筆ジャンル:男性向けラブコメ

ユピテル      執筆ジャンル:MMORPG中心

卍風理まんじふうり     執筆ジャンル:異世界転生モノ

小早川優奈こばやかわゆうな  執筆ジャンル:女性向け恋愛小説


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


☆一日一話、朝11時に定期更新☆


↓完結済みの過去作品もどうぞ↓

『国宝級イケメンの俺様が幼馴染彼女のストーカーに襲撃されたら、稀代のブサメンに生まれ変わっていた件 ~かくも人生は美しい…… ※ただし、イケメンに限る~』

https://ncode.syosetu.com/n0781ha/

『JK空海、吉備路を駆ける』

https://ncode.syosetu.com/n2890gw/


 高速道路を外れた車はアップダウンを繰り返しつつ、山間のなだらかな快走路へと入る。


 揺らめく木々の作りだすまばらな陰が、夏特有の爽やかさを運んでは過ぎ去ってゆく。カーブに差し掛かった半ばで、新緑の合間から宝石の如き輝きが煌めいた。


「海だ!」


 誰からともなく高揚した歓声が上がる。


 近づくにつれ照り返しを増す碧い海。強烈な陽光に負けじと広がる蒼い空に波の白、浜辺のサンドベージュのコントラストが映える。森が林になり、目に映る緑が急速に減っていくとともに、人工物が次第に増えていく。家屋が建ち並ぶ海沿いの幹線道路へ達したところで、働きっぱなしだったナビはその仕事を終えた。


「チェックインまでは時間があるから、荷物を預けて泳ぎに行きましょう! 更衣室を借りられるみたいだし」

 停車するや否や、車から飛び出した紗里緒が、背伸びしながら言う。


 ホテルという名を冠するものの、限りなく旅館に近い三階建ての和風建築が目の前に鎮座している。しかし、玄関をくぐると、さもありなん。内装は間接照明を多用した真新しいレトロモダンで統一されている。


「去年、リノベーションされたばかりだから、綺麗でしょ」

 紗里緒の言う通り、傷一つ、染み一つ、見当たらない。


 新築特有の、木の香りすら漂っている。バリアフリーが徹底されているのも助かる。ユピテルのコンテナを運ぶ俺にとっては……。


「よく、いらっしゃいました」

 姿を現したのは着物に身を包んだ、うら若い女将だった。緩やかな所作で座礼をして見せると、こちらが恐縮しない程度の的確な間で頭を上げる。


「『ラノベ窟』御一行様、ですね?」

 なんちゅー名前で予約してんだよ……。


「お世話になります!」

 元気よく答える紗里緒と、意に介さないユピテルを除き、他の面々は苦笑いで佇むしかない。


「お荷物、お預かりします。チェックインまでは、温泉の脱衣場を更衣室としてご利用ください。そのままビーチへ出入りできるようになってございます」


「ありがとうございます!」


「どうぞ……ご案内します」

 改めて頭を下げた女将は、恙ない動きで立ち上がると先導して歩きはじめる。


「……雑用……コンテナを浜辺へ……」


「海まで持っていくのか⁉」

 コクリと頷く無表情のユピテル。その真剣な眼差しの前では、言うがままに従うしかない。


「……熱は大敵……日陰に……」

 ご丁寧に注文付きである。


「パラソルを貸してくれるそうだから、先に行って差しといてよね! 二本よ、二本! さぁ、私たちは更衣室で着替えましょ!」

 吐き捨てるように言い残した紗里緒は、心配そうに見つめる響と優奈の手を取って、ズンズンと館内へ消えていった。


「ドンマイ……」

 パラソルを持ってきた老練なる男衆おとこしだけが、俺の悲哀を察してくれた。




 ホテルの裏庭をぐるり周ると、そこはもう砂浜だった。


 海まで徒歩十秒。最高の立地だ。しかも、ハイシーズンにも関わらず、人が少ない。家族連れが数組、パラソルを張っているばかりである。旧家の屋敷が建ち並ぶこのエリアは、おそらく公共駐車場から離れているのだろう。その証左に、一里先の浜辺は人でごった返している。


 借りてきたパラソルを取り出すと取扱説明書に従って、スクリュー型の楔を浜辺へ打ちこむ。乾いたように見える砂浜も、浸潤した海水によって湿った底部は固い。刺し進むに従って、その重みを倍加させる。燦燦と照りつける熱線を浴び、滴る汗を拭いながら設営作業を続けると、ついにパラソルを挿すソケットが固定される。

 喜びも束の間、二つ目のソケットを地中に差し終える頃には、Tシャツからパンツの中まで、ぐっしょりと汗で濡れていた。早く着替えて海に飛び込みたい衝動に駆られるも、荷物を放置していくわけにもいかず、思い留まった。


 出来上がったばかりの陰の中へ倒れ込む。達成感よりも疲労が先行している。朝から運転して、荷物運んで……。折角の休みに、何をやってるんだ俺は……。


「なーにヘバってんのよ!」


 微睡まどろみへ沈みつつある俺の視界に飛び込んできた光景は、愚痴も疲労も一瞬で吹き飛ばした。


お読みいただき、ありがとうございます。

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