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ラノベ窟のヘヴィーな廃人  作者: 広江宇一
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第38話/三章-⑬

「この……ウンコ製造機がぁぁぁぁぁあ!」

薄暗い教室に銀髪少女の怒号が響き渡る――


純文学作家を目指すも挫折し、国内でも珍しい文学科を備えた高等学校『高村学園』に就職した和久井耀は、文芸部の顧問を任される。しかし、待っていたのは通称『ラノベ窟』。ライトノベルをこよなく愛する変人の巣窟だった。


新進気鋭の女子高生プロライトノベル作家に囲まれ、『ラノベ窟』の非常識な活動に翻弄されながら、耀は至高の作品を書き上げることができるのか――!?


【登場人物】

和久井耀わくいよう     高村学園常勤講師

那津川紗里緒なつかわしゃりお  執筆ジャンル:王道ファンタジー

紺野響こんのひびく     執筆ジャンル:男性向けラブコメ

ユピテル      執筆ジャンル:MMORPG中心

卍風理まんじふうり     執筆ジャンル:異世界転生モノ

小早川優奈こばやかわゆうな  執筆ジャンル:女性向け恋愛小説


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


☆一日一話、朝11時に定期更新☆


↓完結済みの過去作品もどうぞ↓

『国宝級イケメンの俺様が幼馴染彼女のストーカーに襲撃されたら、稀代のブサメンに生まれ変わっていた件 ~かくも人生は美しい…… ※ただし、イケメンに限る~』

https://ncode.syosetu.com/n0781ha/

『JK空海、吉備路を駆ける』

https://ncode.syosetu.com/n2890gw/


「ご苦労さま……確かに、勧誘しろとは言ったわよ……でもね……」


 翌日の放課後、部室へ出頭し、事の成り行きを報告する。

 誤解を受けそうな一部の内容……主に、許嫁絡みの顛末については誤魔化そうと試みたが、既に優奈から紗里緒へ連絡があったらしい。

 観念した俺は、全てを洗いざらい白状した。


「許嫁になれなんて、言ってないわよ!」


「許嫁(仮)、だ!」

 不機嫌なオーラを放ち続ける紗里緒の怒鳴り声に対し、俺は猛然と抗議した。


「そんなのどっちでもいい! あー、やだやだ。やっぱり性的に接触してきちゃって……」


「話を聞いてたか⁉ 優奈の母にされるがままで……なぁ、響なら分かってくれるだろう?」

 すがるように助けを求めたものの、腕を組んでそっぽを向いた響は押し黙ったままだった。


「……響……さん?」

 恐る恐る呼び掛けるが、


「……私をのけ者にして、他の女の子に唾をつけに行った訳ですね。しかも、許嫁なんて……」

 返ってきたのは空気をピリピリと震わせる威圧的なオーラだった。


「だから、許嫁(仮)だって……」


「黙りなさい! センセイ! そこに正座!」

 響の指し示すがまま、肩をすくめて素直に床へ正座する。


「許嫁ってのは、優奈の母の冗談で……俺は紗里緒の依頼を成し遂げようと……」


「やり方ってもんがあるでしょうが⁉」

 狂気に満ちた叫びで、激昂する響。今は何を言っても火に油、だ……。


「ホントだよねー、響……」


「シャルちゃんは黙ってて! そもそも、シャルちゃんのせいでしょ! そこに座りなさい!」

 軽薄に賛同を示した紗里緒を一喝し、並んで正座させると、


「……謝って……」

 光彩を失った漆黒の瞳が、突き破らんばかりに俺を射抜く。


「……謝りなさいよ!」


「ごめんなさい!」

 反射的に、土下座してしまった。何故、俺がこんな目に……


「許さない……」

 しかも、許してくれんのかい!


「待ってください!」

 勢いよく開かれた扉から駆けこんできたのは、見知った制服を着た少女だった。


「優奈……ちゃん……?」

 俺を庇うように立ち塞がった優奈は、力強く、一つ頷いた。


「遅くなって、ごめんなさい。先生の事、見張っとかないと盗られちゃうよって、お母さんが脅すから……居ても立ってもいられなくなって……私……」


「ほぅ……あなたが噂の小早川優奈……。自ら死地に飛び込みますか……」

 鷹揚に告げる響は、獲物を捉えた狩人の目をしている。


「あなたが響さん……ですね? 和久井先生は私の許嫁です! 絶対に渡しません!」

 両者の視線は雷光を放つが如く強烈に交錯する。しかし、睨み合いは長くは続かなかった。


「……はぁ……ま、中学生相手に本気は出せないね……」

 突如、頭を振った響は気の抜けた息を吐いた。


「余裕、ですか……?」


「決めるのはセンセイだから……。あまり困らせてもいけないでしょ?」

 唖然としつつも未だ構えを解かない優奈から視線を逸らして、響は静かに呟く。


「大人……なんですね。勉強になります。また一つ小説のネタができました」


「ちゃっかりしてるよ、まったく……って、小説の、ネタ……?」

 言葉の意味に気づいた響の揺れる声に、固い意志が煌めく瞳で応じた優奈は頷き、


「私……書きたいんです……今度こそ、作品を完成させたい……私の世界を、皆さんに読んでもらいたいんです! お願いします! この部へ入れてください!」

 不退転の決意を高らかに謳い上げると、深く頭を下げた。


「……それに、私、許嫁、なので……」

 顔を上げた優奈は、頬を淡く染めて俺を見た。その初々しい仕草に、思わずドキリとする。


「わかりました……その根性、気に入りました! 入部を許可します!」


「ありがとうございます!」

 俺たちに一ミリの相談もなく、話は滞りなく進んでいく。


「負けませんよ!」


「こちらこそ!」

 固く握手を交わす二人。


「あのー……そろそろ……」

 おずおずと紗里緒が割って入る。俺も紗里緒も、未だ床へ正座されられたままだった。


「お二人は今日一日、その格好で反省してください。さ、優奈さん、こちらへ」


「ありがとうございます! 響さん」

 風理の席に優奈を座らせた響は俺たちを置き去りにして、部のルールを説明し始める。

 顔を見合わせた俺と紗里緒は、苦笑いで小さく溜息を吐いた。


 こうして、小早川優奈はラノベ窟の廃人へ名を連ねる事となった。


お読みいただき、ありがとうございます。

皆様の応援が執筆の糧です。


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