第37話/三章-⑫
「この……ウンコ製造機がぁぁぁぁぁあ!」
薄暗い教室に銀髪少女の怒号が響き渡る――
純文学作家を目指すも挫折し、国内でも珍しい文学科を備えた高等学校『高村学園』に就職した和久井耀は、文芸部の顧問を任される。しかし、待っていたのは通称『ラノベ窟』。ライトノベルをこよなく愛する変人の巣窟だった。
新進気鋭の女子高生プロライトノベル作家に囲まれ、『ラノベ窟』の非常識な活動に翻弄されながら、耀は至高の作品を書き上げることができるのか――!?
【登場人物】
和久井耀 高村学園常勤講師
那津川紗里緒 執筆ジャンル:王道ファンタジー
紺野響 執筆ジャンル:男性向けラブコメ
ユピテル 執筆ジャンル:MMORPG中心
卍風理 執筆ジャンル:異世界転生モノ
小早川優奈 執筆ジャンル:女性向け恋愛小説
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祝杯だとでも言わんばかりに、缶ビールを一口煽った優奈の母は、
「……優奈も、本当は気付いてるんじゃないの?」
自分の娘ではなく、チラリと俺を一瞥した。
「……どういう……ことです?」
唖然として金魚のように口をパクつかせる優奈を横目に、俺は聞いた。
「だって、優奈、和久井先生の事、好きじゃん?」
「え……?」
頭の中が一瞬で真っ白になる。
「ひゅっ……」
優奈の口からは空気の抜けるような音が洩れた。
「だって、昨日から和久井先生の話ばっかするし、今日の様子を見てたら確定でしょ。優奈は恋愛ができない訳じゃない……その予兆に気づいていないだけ。解決、解決! これで安心して高校へ行けるね!」
ビシッと親指を立てる母の前で、優奈は顔を真っ赤にして口を戦慄かせている。
「先生も満更でもない感じだしー、優奈の事を理解しようとしてくれてるしー、ウチまで来るくらいだから脈アリっしょ。王子様が迎えに来てくれて、良かった良かった! 結婚は……年齢的に無理か。とりあえず、許嫁(仮)ってことで!」
ノーガードの優奈に言いたい事を全てぶつけると俺へ向き直り、どうぞよろしく、と三つ指ついて頭を下げる。
「……え、でも……」
今度は俺が口籠る番だった。
「なに? ウチの娘じゃ不服だって言うの?」
頭を上げた優奈の母は、ドスの利いた声で俺を睨みつける。
「……イエ……デモデスネ……」
思わず片言になってしまう。
「じゃ、あたしと結婚する?」
急に笑顔を輝かせると、俺の左腕に抱きついた。
「……ハ、ハイィ……?」
「そうすれば、みんな幸せでしょ? 先生には可愛い娘と息子ができるし、優奈もずっと先生といられるし、あたしも満たされるし……イロイロと、ね」
少し火照った顔と、前かがみになった事で露わになる鎖骨が、妖しく俺を誘惑する。
「ダメーーーーーー!」
今度は空いていた右腕にしがみついた優奈が、叫んだ。
「先生は……私と結婚するんだから!」
えぇー! なんかうまく丸め込まれているような……。
「冗談よー冗談。あたしも彼氏できたから付き合えないしー」
彼……氏……?
「え⁉ お母さん、またなの⁉」
また……?
「今度は長続きするよー」
今度は?
「もう職場恋愛で破局して転職とかやめてよね! そのせいで私……」
そういえば転職を繰り返しているとか、紗里緒が言ってたっけ。
「ごめんごめん。もう大丈夫。今回は友達に紹介してもらった人だから」
そういう問題か⁉
「お母さんの恋愛遍歴を見てるから、私……いつも一歩を踏み出せなくて……」
……全部、この母親のせいじゃねーか⁉
恋愛上手の母に恋愛下手の娘……。確かに、この母を反面教師にした優奈の判断は間違ってはいない。
「わかった、わかった。悪かったって。今度は大丈夫。人の心配より、自分の心配をしたら? ま、先生は未婚だし、彼女がいない事もリサーチ済みよ。安心なさい。ここまでお膳立てしないと奮い立たないなんて、本当に私の娘かしら……」
あなたのような歴戦の猛者からすれば、誰しもが初心者ですよ……。
「あのー……俺の意思は……?」
「先生も軽々しく家庭の問題に首を突っ込んだ責任は取らないとね。ま、お試し期間ってことで、高校三年間はよろしくぅ!」
「ふ、不束者ですが……よ、よろしくお願いします……」
二組の対照的な瞳が俺を見つめる。
「先生……お父さんになるの? それとも、お兄ちゃんになるの……?」
風呂上がりのかなたが、扉の隙間から羨望の眼差しを向けている。
「……お友達からでお願いします……」
辛うじて言葉を捻り出した。
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