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ラノベ窟のヘヴィーな廃人  作者: 広江宇一
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第30話/三章-⑤

「この……ウンコ製造機がぁぁぁぁぁあ!」

薄暗い教室に銀髪少女の怒号が響き渡る――


純文学作家を目指すも挫折し、国内でも珍しい文学科を備えた高等学校『高村学園』に就職した和久井耀は、文芸部の顧問を任される。しかし、待っていたのは通称『ラノベ窟』。ライトノベルをこよなく愛する変人の巣窟だった。


新進気鋭の女子高生プロライトノベル作家に囲まれ、『ラノベ窟』の非常識な活動に翻弄されながら、耀は至高の作品を書き上げることができるのか――!?


【登場人物】

和久井耀わくいよう     高村学園常勤講師

那津川紗里緒なつかわしゃりお  執筆ジャンル:王道ファンタジー

紺野響こんのひびく     執筆ジャンル:男性向けラブコメ

ユピテル      執筆ジャンル:MMORPG中心

卍風理まんじふうり     執筆ジャンル:異世界転生モノ

小早川優奈こばやかわゆうな  執筆ジャンル:女性向け恋愛小説


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


☆毎日、朝11時に定期更新☆


↓完結済みの過去作品もどうぞ↓

『国宝級イケメンの俺様が幼馴染彼女のストーカーに襲撃されたら、稀代のブサメンに生まれ変わっていた件 ~かくも人生は美しい…… ※ただし、イケメンに限る~』

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『JK空海、吉備路を駆ける』

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「じゃ、行きましょう」

 紗里緒は優奈の手を引き促すように、後部座席へ乗りこむ。俺は運転席に腰を下ろした。


「え、でも、こんな綺麗な車……」

 ドアの前で優奈は立ち止まり、躊躇する。


「気にしないで。さぁ、どうぞ」

 少しでも打ち解けられるよう、努めて優しい声音を心掛ける。


「……えっと……お邪魔します」

 そう言うと、優奈は靴を脱ぎはじめた。


「いやいやいや、土足でいいんだよ?」


「えっ……でも……」

 固まる優奈を見て俺は思った。どんだけいい子なんだよ、と。


「初日から硫黄臭まみれにしてくれた、どっかの誰かさん達とは出来が違うなぁ」

 露骨な嫌味に、さすがの紗里緒もバツが悪そうだ。


「いいのよ、優奈。掃除も碌にできてない車だから。所有者の雑な性格が出てるのね」

 報復かのように、あからさまな皮肉が秒で返される。


「昨日も引っ張り回されたのに、掃除なんてできるか!」

「綺麗好きなら、帰ってからスグに掃除するでしょ!」

「日も暮れて、疲れ切ってるのに無理だろ!」

「部用車の管理はアンタの仕事でしょ!」

「部用車じゃねぇ! 俺の車だ!」

「昼まで寝てたくせに!」

「それは関係ないだろ!」


「……フ……フフフ……」

 罵倒の応酬を唖然と眺めていた優奈は、突然笑い出し、


「……ごめんなさい……こんな激しい紗里緒さん、初めて見たから……」

 俺たちの視線をかわすように俯いた。


「なんだか、微笑ましくて……」

 堪え続ける笑いは、なかなか治まらない。


 一方の紗里緒は耳まで真っ赤に染めている。初めて優奈に曝け出した自らの本性を恥じているようだ。


「……ま、まぁ、確かに、いつもの私はお淑やかなキャラだから……」


「お淑やかぁ? お前が? 嘘だろ……」

 運転席の背もたれに蹴りが撃ち込まれる。


 その衝撃はお淑やかから一番遠い威力だった。これ以上、余計なことを言うなという脅しに混じって、照れ隠しが多分に含まれている。


「ま、まぁ、優奈の好きなように乗ればいいのよ」


「……じゃ、こうさせてもらいますね」

 そう言って優奈は鞄から取り出したレジ袋に靴を仕舞うと、靴下で車内へ入り、流れるような所作で腰を下ろしてシートベルトを締める。突っ立ったままの紗里緒とはえらい違いだ。


「おい、お淑やか。真似してみろよ」

 猛烈な反撃が背もたれを襲う。


 ヤバい……これ以上の衝撃は内装が耐えられそうにない。


「……じゃ、行こうか。優奈ちゃんはお昼ご飯食べたのかな? ファミレスでも行く?」


「ゆ、ゆゆゆゆ、優奈ちゃん⁉」

 引き攣った声で自らの名前を繰り返す優奈。赤面して口を抑えている姿が室内鏡に映る。


「あれ? ダメだった? 小早川さんの方がいい?」

 俺の問いかけに優奈は、取れてしまいそうなほど首を左右に振っている。


「いえっ……す、すみませんっ! そんな風に呼ばれ慣れてなくて」


「ごめんごめん。いきなり馴れ馴れしかったよね。優奈ちゃんって、呼んでいい?」


「……はい! 嬉しいです!」

 輝くような満面の笑みにこちらまで明るくなってくる。


「そっか。良かった。ファミレスでいい?」


「……あ、それは、私……お金ないんで……」

 突然、優奈の笑顔に陰が差す。


「いいよ、いいよ。俺が出すから」


「いえ、それはいけません! 払って頂く理由がありません。お話はここで伺います」

 それまでの朗らかな様子は一変し、毅然とした態度で拒絶する。


「……そ、そうなんだ。じゃ……」

 俺は紗里緒へ目配せして助けを求める。


「……前行った公園、行こっか?」


「……はい。ごめんなさい」


 紗里緒の提案に、申し訳なさそうな苦笑いで優奈は頷いた。


お読みいただき、ありがとうございます。

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