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ラノベ窟のヘヴィーな廃人  作者: 広江宇一
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第23話/二章-⑩

「この……ウンコ製造機がぁぁぁぁぁあ!」

薄暗い教室に銀髪少女の怒号が響き渡る――


純文学作家を目指すも挫折し、国内でも珍しい文学科を備えた高等学校『高村学園』に就職した和久井耀は、文芸部の顧問を任される。しかし、待っていたのは通称『ラノベ窟』。ライトノベルをこよなく愛する変人の巣窟だった。


新進気鋭の女子高生プロライトノベル作家に囲まれ、『ラノベ窟』の非常識な活動に翻弄されながら、耀は至高の作品を書き上げることができるのか――!?


【登場人物】

和久井耀わくいよう     高村学園常勤講師

那津川紗里緒なつかわしゃりお  執筆ジャンル:王道ファンタジー

紺野響こんのひびく     執筆ジャンル:男性向けラブコメ

ユピテル      執筆ジャンル:MMORPG中心

卍風理まんじふうり     執筆ジャンル:異世界転生モノ

小早川優奈こばやかわゆうな  執筆ジャンル:女性向け恋愛小説


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


☆毎日、朝11時に定期更新☆


↓完結済みの過去作品もどうぞ↓

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『JK空海、吉備路を駆ける』

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 翌日の午後、駅前で紗里緒とユピテルを車へ乗せ、畷神社へ向かう。

 土曜日ということもあり、駐車場は満杯に近かった。少し待って、どうにか空いたスペースへ車を滑り込ませる。


 スーツに身を包んだ俺は、昨日と同じように震える指でインターホンを押した。しかし、今日は武者震いに違いなかった。絶対に響を取り戻す。その覚悟が背中を押している。


「……いらっしゃい」

 玄関を開けた途端、意表を衝かれた。てっきり響の母が現れるものだと、思い込んでいた。


「響……⁉」

 姿を現したのは、私服姿の響だった。心なしか痩せただろうか。俯きがちな様子は、まるで別人のように覇気を感じない。大丈夫か、なんて声を掛けようと口を開きかけたその刹那、


 ――パシっ!


 乾いた音が静かな三和土たたきに響く。


「勝手に行くんじゃないわよ!」

 気がつくと、一歩踏み出した紗里緒が、響の頬を張っていた。


 熱さを確かめるように頬へ手を当てる響が、呆然と立ち尽くしている。


「……ごめん……なさい」

 小さく呟くと踵を返し、


「どうぞ、入って……」

 ぎこちない造り笑顔で、改めて俺たちを迎える。


 未だ興奮冷めやらず肩で息をしている紗里緒を促して、俺たちは案内されるがままに応接室へ入った。


 沈みの深い鈍色にびいろのソファへ腰をかける。響の母の姿は無い。約束通り、父親を連れ出してくれている。やれやれ……。いきなり緊迫した展開だな、なんて考えたのも束の間、


 泣いている……顔を手で覆った響が声を押し殺して泣いている。涙は手の平を伝って、止め処なく床を濡らし続けている。


「……おい……」

 俺は隣に座る紗里緒を肘で小突いた。


「……私のせいだって言うの……?」

 紗里緒が小声で抗議を上げる。


「謝っとけ……」

 俺も倣って小声で返す。


「……だって……手が勝手に……」

 往生際悪く言い訳する紗里緒。


「違うの……シャルちゃんは悪くないの……」

 引きつる声で響が呟く。


「……だから会いたくなかったの……別れが……辛くなるから……」

 捻りだすようなその声に、胸が締め付けられる。


「だったら……!」

 強い口調の紗里緒が言い終わる前に、響は首を横に振る。


「……もう、決めたの……ずっと覚悟はしてた……いつかこうなるって……」

 響の涙は止まらない。


「……私たちの約束はどうするのよ……」

 紗里緒の問いに、響の動きがピタリと止まる。


「……ごめん」


「謝ってほしいんじゃない! いつか私を越えるんでしょ! そして……!」

 紗里緒は言いかけた言葉を吞み込むと、響に背を向けて歯噛みする。


「……私には……両親を裏切れない……」


「待て待て、そう結論を急ぐな」

 緊迫した空気をぶち壊すように、努めて呑気な口調で割って入った。


「俺にはどうしても、心の底から望んで転校するようには思えない。響はどうしたい?」


「それは……」

 目を逸らした響は、逡巡するばかりで言葉を形にできないようだった。


「今も言っていたじゃないか。別れるのが辛いんだろ? それが、涙の理由なんじゃないのか?」


「……」

 もはや響は声も出せない。幼子のように嗚咽だけを上げている。


「本音を教えてくれ。響の本当の想いを……」


「……わたし……」

 一呼吸おいて胸に手を当てた響は、意を決したように顔を上げる。


「……行きたくない……本当はみんなと一緒にいたい……!」

 そう言う間にも大粒の涙がとめどなく頬を伝う。


「それでいい。それでいいんだ。それだけが聞きたかった……」

 俺は声を上げて泣く響の頭をさらりと撫でる。


「……響は両親に逆らいたくない……だったら、転校の必要はないと言われればいいわけだ」


「でも、父は……」


「俺が責任を持って説得する。だから、力を貸してくれ!」

 悪魔に魂を売る……この時、俺は決心した。


「本当にやる気……?」

 紗里緒が頭を抱える。


「俺は響を諦めない! 独りになんてさせない!」

 俺の言葉に響の目が見開かれる。瞳には輝きが差し、凛とした覇気が戻ってくる。


「分かりました……センセイを信じます……!」


 俺は計画の全容を語って聞かせた。


お読みいただき、ありがとうございます。

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