表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ラノベ窟のヘヴィーな廃人  作者: 広江宇一
21/70

第21話/二章-⑧

「この……ウンコ製造機がぁぁぁぁぁあ!」

薄暗い教室に銀髪少女の怒号が響き渡る――


純文学作家を目指すも挫折し、国内でも珍しい文学科を備えた高等学校『高村学園』に就職した和久井耀は、文芸部の顧問を任される。しかし、待っていたのは通称『ラノベ窟』。ライトノベルをこよなく愛する変人の巣窟だった。


新進気鋭の女子高生プロライトノベル作家に囲まれ、『ラノベ窟』の非常識な活動に翻弄されながら、耀は至高の作品を書き上げることができるのか――!?


【登場人物】

和久井耀わくいよう     高村学園常勤講師

那津川紗里緒なつかわしゃりお  執筆ジャンル:王道ファンタジー

紺野響こんのひびく     執筆ジャンル:男性向けラブコメ

ユピテル      執筆ジャンル:MMORPG中心

卍風理まんじふうり     執筆ジャンル:異世界転生モノ

小早川優奈こばやかわゆうな  執筆ジャンル:女性向け恋愛小説


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


☆毎日、朝11時に定期更新☆


↓完結済みの過去作品もどうぞ↓

『国宝級イケメンの俺様が幼馴染彼女のストーカーに襲撃されたら、稀代のブサメンに生まれ変わっていた件 ~かくも人生は美しい…… ※ただし、イケメンに限る~』

https://ncode.syosetu.com/n0781ha/

『JK空海、吉備路を駆ける』

https://ncode.syosetu.com/n2890gw/


 俺は意を決し玄関へ近づくと、震える指を抑えつけるようにインターホンを鳴らす。


「どちら様でしょう?」

 落ち着いた声が返ってくる。どうやら響ではない。


「私、高村学園の講師で、和久井と申します。響さんの事でお話が……」


 やや間があり、……少々お待ちください、と聞こえたのも束の間、玄関の引き戸が開け放たれた。姿を現したのは、和装に身を包んだ妙齢の女性だった。その凛とした透明感から察するに、響の母だろう。どうやら顔は父親似、雰囲気は母親似らしい。


「初めまして。響の母です。和久井先生、ようこそいらっしゃいました」

 深々と頭を下げた響の母は、雰囲気そのままの落ち着いた調子で言った。


「突然すみません。響さんが学校へ来ないものですから、心配で……」


「それは……ご心配をお掛けして、申し訳ございません」

 鷹揚にお辞儀するその麗しい姿に、思わず見惚みとれてしまう。


「えーと……響さんとお話をさせて頂きたいのですが……」


「響はもう、ここには居ません」


「え?」


「全寮制の女子高へ転校させました」

 ました? 過去形、なのか……


「それは……」


「残念ながら、話し合いは折り合わず、この神社を継ぐという生まれ持っての宿命を諭された響は結局、納得して転校に応じたのです。私にも、これ以上の肩入れは……」

宿命……? 納得……?


「そんな馬鹿な⁉」

 無意識に俺は叫んでいた。脅かすような大声を出したことを後悔し、咄嗟に手で口を塞ぐ。


「……確かに馬鹿な事だとお思いでしょう。しかし、賢いあの子の事です。既にこうなる覚悟をしていたのかもしれません」

 俺の大声にたじろぐ事もなく、響の母は静かに告げた。


「お母様は……それでいいんですか?」

 食い下がる俺を諭すように、


「……あの子の決断を支持してあげたいと考えております」

 淀みのない声が答える。


「そんなの……響の本心な訳ないじゃないですか! 聞き分けがいいのは彼女の美徳かもしれない。でも、色々なものを抑圧された結果が彼女の作品なんです。書く事だけが唯一、彼女を解放させる救いだった……。それを奪われた今、苦しんでいるに違いないんだ!」


「……わかっています……!」

 漆黒の瞳が真っすぐに俺を射抜くや、否や、


「……私は響の母親なのですから……。それでも、生まれもった宿命には逆らえないのです。あの子もわかっています。私も夫も、間違った判断はしていないつもりです」

 昂った感情を恥じるように、響の母は目を伏せた。


「宿命……宿命って何なんだ! 定めに抗う生き方を教えるのも、大人の責任でしょう!」


「簡単に言ってくれますね……あなたにはそれができますか? あの子の背負っている重さを取り去ってやれますか?」


 重さ……か……。

 それはきっと、神主の家に生まれたが故の宿命なんかじゃない。現実への諦め……。幼い頃からその型を破れないと決めつけている、響の価値観そのものに他ならない。


 響は常に内なる自分と闘っていた。たった一人きりで……。愛情に満ちた環境で優しく育てられた彼女だからこそ、家族を裏切れないに違いない。そんな少女のSOSを俺は見落とした……。顧問としても、部員としても、雑用としても、失格だ! 絶対に響を救ってみせる!


「取り去ることはできません……しかし、一緒に背負うことはできます! あの子には仲間がいる! 絶対に、独りにはさせない!」

 響の母は微動だにすることなく、じっと俺の目を見据えている。


「……わかりました。そこまでの覚悟があるのならば、娘をあなたに託します。明日、響は荷物を取りに戻ります。わずか二時間ほどですが、猶予を差し上げます。なんとか夫を遠ざけましょう。娘と話してやってもらえますか?」

 様々な想いを巡らせるように目をみはった響の母は、


「あの子が別れを告げなかったのは、その方が辛くなるからです。それでも、会いますか?」

 薄い溜息のあと、小さく呟いた。


「絶対に行かせません……引き留めてみせます!」


お読みいただき、ありがとうございます。

皆様の応援が執筆の糧です。


「☆☆☆☆☆」を押して評価をお願いします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ