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ラノベ窟のヘヴィーな廃人  作者: 広江宇一
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第20話/二章-⑦

「この……ウンコ製造機がぁぁぁぁぁあ!」

薄暗い教室に銀髪少女の怒号が響き渡る――


純文学作家を目指すも挫折し、国内でも珍しい文学科を備えた高等学校『高村学園』に就職した和久井耀は、文芸部の顧問を任される。しかし、待っていたのは通称『ラノベ窟』。ライトノベルをこよなく愛する変人の巣窟だった。


新進気鋭の女子高生プロライトノベル作家に囲まれ、『ラノベ窟』の非常識な活動に翻弄されながら、耀は至高の作品を書き上げることができるのか――!?


【登場人物】

和久井耀わくいよう     高村学園常勤講師

那津川紗里緒なつかわしゃりお  執筆ジャンル:王道ファンタジー

紺野響こんのひびく     執筆ジャンル:男性向けラブコメ

ユピテル      執筆ジャンル:MMORPG中心

卍風理まんじふうり     執筆ジャンル:異世界転生モノ

小早川優奈こばやかわゆうな  執筆ジャンル:女性向け恋愛小説


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


☆毎日、朝11時に定期更新☆


↓完結済みの過去作品もどうぞ↓

『国宝級イケメンの俺様が幼馴染彼女のストーカーに襲撃されたら、稀代のブサメンに生まれ変わっていた件 ~かくも人生は美しい…… ※ただし、イケメンに限る~』

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『JK空海、吉備路を駆ける』

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「……という訳なんだ……」

 ついさっき校長室で起こった顛末を部室で再現してみせる。


「そうですか……父さんが……」

 自嘲気味に薄い笑いを浮かべる響だが、血の気が失せて青白くなった顔色は、無理をおして気丈に振舞っているようにしか見えない。


「まぁ、いつかはこんな日が来るとは覚悟していましたけど……」

 その視線は遠く、虚空を見上げている。


「……どうするの、響?」

 机を指で小刻みに叩きながら、落ち着かない様子で紗里緒が問う。


「話し合ってみるしかないね。隠していたのは事実だし……。でも、あの人、頑固だから、譲らないと思う。ま、退部しても、こっそり部室へ通えばいいだけだよ、ね……」

 痛々しい微笑みを崩さない響だったが、ここへきて唇を固く引き結んだ。


「なんとかしなさいよ、アンタ、顧問でしょ!」

 行き場のない紗里緒の怒りは、矛先を俺へ向けた。

 肘で突き回される肋骨が、地味に痛い。


「なんとかったってなぁ……俺は目の敵にされてるし、親子で話し合う以外に解決の糸口が無いのも事実だろう」


「そう……ですよね……」

 いつになく自信なさげに項垂れる響のSOSに俺は気づいていなかった。

 その日を境に、響は学園から姿を消した。




 火曜日、部室で待っていても響が姿を現すことは無かった。

 水曜日も同じように過ぎ、木曜日。紗里緒によると、連絡してもスマホの電源が切られているらしい。これはただ事じゃないと思い始めた金曜日の朝、響の退学届けが郵送されてきたと、校長から告げられた。


 思わぬ速さで凶事は進み、すでに事は予断を許さない。体調不良を言い訳に、始まったばかりの勤務を中座した俺は車に飛び乗り、響の実家へと急いだ。校長の許可を取るべきだろうが、言えば必ず止められる。今は響に会い、真意を質す事が最優先だった。


 なわて神社はこの地域一帯の一宮いちのみやである。入母屋いりもや造りの本殿は国の重要文化財に指定されており、初詣となると、真っ先に名前の挙がる由緒正しい神社である、と後で紗里緒に聞いた。この辺りの地理に詳しくない俺はその辺のよくある神社を想像していたので、度肝を抜かれた。

 駐車場は観光バスが並んで停まっても余裕がある程に広く、社内はそれ以上に広大で、敷地の中に大小合わせて十以上のやしろが祀られている。まるで迷路のような回廊が社内を繋ぎ、参拝客がひっきりなしに行き交っている。


「これは困った……」

 俺は思わず呟いた。


 響に会うどころか、自分が今どこにいるかも見当がつかない。つまり、迷子になった。容赦なく照りつける太陽の熱線を浴びながら、社内をぐるぐると巡る。三周もして汗だくになった所で、拝殿を見上げる社務所の裏手に民家風の建物を見つける。近づいて見ると、玄関扉の片隅に小さく「紺野」と墨書きされた表札が掛かっている。どうやらここが宮司一家の住まいらしい。


 穏便にと釘を刺された手前、正面突破は気が引ける。とりあえず、人気のない物陰から観察することに決めた。客観的に見たら、ただの不審者だな……。


 業間の休憩時間を見計らって、紗里緒に電話を掛けた。響の部屋の場所さえわかれば、と期待しての通話だった。しかし、それは徒労に終わる。響が紗里緒の家へ行くことはあっても、その逆は今まで無かったという。さもありなん。あの男を父に持つ以上、自由、かつ気軽に交友関係が結べるとは思えない。事態は我慢大会の様相を呈してきた。


 正午を大幅に過ぎ、ストーカーじみた張り込みが四時間にも及んだ辺りでやっと動きがあった。にわかに人の気配が高まる玄関を注意深く凝視すると、見知った顔が姿を現した。

 響の父親だ。スーツ姿の響の父は、足早に車へ乗り込むと軽やかなエンジン音を響かせながら出かけて行った。


 チャンスは今しかない。


お読みいただき、ありがとうございます。

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