この百合にお菓子はいらない
ただ飴をもらっただけ。
それがこの恋のはじまりだった。
たぶんお互いに、何とも思っていない、無関心な相手でしかなかった。
受け取ったときに触れた手。
飴玉で膨らんだ彼女の頬。
たったそれだけで、恋に落ちた。
また触れあうきっかけが欲しくて、私はチョコレートを準備した。
だけど鞄に潜ませたそのチョコを渡すまでに、4日分くらいの勇気が必要だった。
女の子同士なんだから、話をするくらいは簡単なことだ。
気軽に挨拶することも、世間話をすることも。
だけど、あなたが好きだと、伝えることはあまりにも難しい。
たまたま、もし良ければ、と小さなお菓子を渡しあうだけの私達。
きっかけは、泣いている彼女を見かけたときだ。
失恋で泣き崩れている彼女をたまたま見つけ、彼女が渡せなかった手作りのクッキーを、私なんかが代わりに食べた。
私ではない誰かに向けて、クッキーに込められていた彼女の愛情が、私のお腹に消えていく。
それがじんわりと涙腺に響いて、私まで涙が止まらなくなった。
それ以来私達は、ただの友達同士、女の子同士を超えて、少し親密すぎるくらいの仲良しになれたように思う。
何度も二人きりで、いろんなお菓子を食べた。
二人きりでいろんな話をして、たくさんの時間を過ごした。
だけど本当は始めから、私は、甘いお菓子なんて好きじゃない。
そんな簡単なことすら言い出せないくらい、彼女のことが好きで。
そんな簡単なことすら言い出せないくらい、私は臆病だった。
好きで好きで、堪らないくらい好きだ。
だから今、ありったけの勇気で口を動かし、ありったけの想いを込めて、あなたに伝える。
女同士なのに、こんな気持ちになってごめんなさい。
本当は私は、お菓子は好きじゃありません。
ただ、あなたと話すきっかけが欲しかった。あなたと一緒に過ごす理由が欲しかった。
私は、あなたが、好きです。
目尻を下げて、優しく、でもどこか寂しそうに微笑む彼女。
もうずいぶん長く、一緒に過ごしてきたけれど、たぶんそれは初めて見る表情だった。
知ってたよ。最初から。
透き通って、ゆっくりと響くあなたの声。
それに続く次の言葉さえ聞くことができたなら、それがどんな言葉でも、私達にはもう、お菓子なんていらない。
1000文字制限だからって、投稿にひよってる奴いる?
いねえよなぁ!!?
ラジオで百合作品読ませるゾ!!!