⑥デグーを増やしてみたい方へ向けて 後編
続きです。
どうぞよろしくお願いします。
さて、そんなわけで赤ちゃんデグーたちが生まれ、ヨチヨチと歩きます。
間抜けな私は、この時非常に重要な点を見落としていたのです。
……デグーベビーたちは、ヨチヨチと歩いていた。
そう、デグーは生まれてから数時間で歩き始めるのです。すごいでしょ。
すると、どういうことが起きるか。
流石に初日から起きはしませんが、数日もするとそれが起き始めます。
そう、脱走だね!(笑)
なにせ、生まれたばかりのデグーベビーはちっちゃいもので。
実は、実際のデグーの赤ちゃんのサイズを考えていなかった私は、この時すでに失態を犯していました。
父母デグー二匹用のケージは、あろうことか金網の隙間が広いタイプ。
出産間近でお腹が膨らんだら、先述の理由からオスと分ける意味でも移動させようと考えていたので、まさかその前に出産するとは完全に想定外。
かといって今から巣ごと移動させて母デグーにストレスを与えるのもマズい。育児放棄したらどうしよう。
そんなことを考えて不安になり、結局そのまま様子を見ることに。
そして数日後、遂に始まります。
活発に動き始めたデグーベビーたちの脱走劇場。
まず最初に、巣の裏から金網の隙間を抜けて脱走。
周囲は段ボールで完全に囲っていたので、それを伝ってひょっこり現れたところを確保。はい、ひょっこりはん。
そして巣の裏を段ボールで塞いだら、今度は金網をよじ登って中間から脱走。
そのまま段ボールを足場に金網の上まで辿り着き、あるいは下に降り、囲った段ボールの上と下から……はい、ひょっこりはん。
可能な限り段ボールで金網の隙間を塞いで対策したら、今度は親がその段ボールを齧って穴を開け、そこから脱走。
あちこちに穴を開けるから、色々な所から……はい、ひょっこりはん。
ならばとプラスチックで囲むと、遂には天井まで登って無理矢理プラスチック板を押しのけて隙間を作って脱走。
段ボールの囲いの前面部分はネズミ返し風にしておいたのですが、そうすると最終的に脱走犯(笑)全員がネズミ返しのところに集まって止まるわけで……はい、はい、はい、はい、ひょっこりはん。
そのうち、外側を囲んだ段ボール(爪をかける場所すら無い平面)を齧り始め、その齧ったところに足をかけて囲いからも脱走を始めます。
だから、この頃は帰宅すると脱走犯をチェックし、囲いの強化を日々研究する毎日。そして夜中も鳴き声で目覚めては様子をチェック、脱走犯をチェック、囲いの状態をチェック、ついでに親の体調もチェック。
寝不足で魂がひょっこりはん。
今思えば、そんな脱走を繰り返せるくらいならもうケージを移しても大丈夫だったのでしょうが、離乳までは下手に手を加えない方がいいと思った私は子どもたちと戦う日々を選びます(笑)
寝不足で冷静さを失い、無意味な戦いに明け暮れる日々。
そしてさらに寝不足になるエンドレス悪循環。
ですが、そんな地獄(笑)の日々もそう長くは続きません。
それは呆気無く終わりを迎えます。何故なら、子どもたちが脱走できないくらいに成長してしまったから。
元々、生まれたばかりの子どもたちと同じくらいのサイズの隙間。
少しでも大きくなれば、それはギリギリ通れるかどうかという感じに。そしてネズミは頭のサイズくらいの隙間しか通れないので、頭が金網の隙間より大きくなればこの脱走劇場は終わります。
遂に、私は勝ったんや。
そう思って油断してました。
すると、一番成長の遅い子が再び……はい、ひょっこりはん。
まだ油断できませんね。寝不足は続きます(笑)
ともかく、一番小さかった子が脱走できなくなった時点で終了。
そして同時に、囲いの段ボールも役目を終え、私の寝不足も解消されます。
そこでようやく頭が冴え、やっと気付きます。
あれ? これ……ケージを移せばよかったんじゃね?(笑)
ですが、初の出産ということで私もアワアワしてましたから。
日中は仕事もしてますし、日々目の前のことを解決しつつベビーたちの成長過程を愛でて時間を無駄に浪費することが精一杯だったのです。
手元には大量の写真と、成長過程をメモした紙の束が。
そんなこんなで私の死闘は終わり、あとはやんちゃな子どもたちを次の段階へと進める日が近付くのみ。
ちなみに、父デグーは専門書に従って出産したその日から別にしました。
本当なら出産前に別にすべきだったのでしょうが、仕方ありません。
母デグーは一匹で子育てを頑張ります。
そして一週間後、専門書に従って恐る恐る父デグーを戻します。
アタフタする父デグー(笑)
そして呑気にあくびしてる母デグー(笑)
子どもたちは最初のうちだけピュイピュイと父デグーを警戒してましたが、そのうち慣れました。
でも父デグーだけになると母デグーを探して動き回るので、やっぱりお母さんがいいのでしょう。ちょっと可哀そうなお父さん。
それでも父デグーは懸命に母デグーを手伝い、最後まで育児に参加します。
そしてやんちゃな子どもたちに、父母デグーに、運命の日が訪れます。
そう、巣立ちの日が。
正確にはオスとメスを分けなければいけない、生後七週目が。
でも、七週を迎えたからすぐに分けないと駄目というわけでもないですよね。まさか早々に妊娠するなんてあり得ないし、まだ大丈夫。
……そう思っていた時期が私にもありました。
正直まだ舐めてました、齧歯類というものを。
なんと、父デグーの様子が変わってきたのです。
明らかに今までとは違う雰囲気で、娘たちのニオイを嗅ぐ父デグー。
直感でヤバそうだと感じた私は、準備してあったオス用ケージに父を移します。
そしてじっくり時間をかけて確実に性別判定を行い、オスだけを父デグーと同じケージに移します。
たぶん、この時に楽観視してそのままにしてたら、父デグーは娘たちと交尾を始めていたのでしょうね。それで妊娠するかは別として。
やっぱ齧歯類パネェっす。油断ならないぜ、フゥ。
そんなこんなでオスとメスで分かれ、さらなる成長を続ける子どもたち。
お世話するケージの数が増えたけど、安心してゆっくり眠れる段階に入ったので、もう何も苦ではありません。
そう思っていた時期が私にも(略)
この頃から、今度は子どもたちの悪戯が激しさを増していきます。
本当に眠れないくらいに激しくケージを齧る。
回し車を持ち上げて落としてみる。
エサ入れを引っくり返し、そのまま引きずる。
水飲みボトルを金網越しに無理矢理齧って穴を開ける。
兄弟姉妹で喧嘩する。
……などなど。
またも寝不足な日々です。
育児ノイローゼ(仮)でイライラし、怒鳴ってしまう日々。
再び対策(器や回し車を針金で固定補強するなど)に追われる日々。
死闘はまだまだ終わりません。
結論から言うと、結局母親と同居していたメスの子どもたちのうち半分を、母親から離したことでこの問題は解決しました。
ケージを齧る子は別ケージに移したら齧らなくなったし、一つのケージに入る数を減らしたら様々な悪戯が減ったのです。何故だろ。
何はともあれ、やっと慌ただしさのピークが過ぎて平穏な日常が戻ります。
あとは、子どもたちを個々に観察するだけ。
そして、懐きやすい子と懐きにくい子、好奇心旺盛な子とビビりな子、エサの好み、おやつの好み……など様々なことを調べる日々。
たかがネズミのこととはいえ、まるで自分の子のように……とは言い過ぎですが、とにかく本当に楽しかった。この頃は最高に充実してたと思います。
やがて一年も経てば、大きさは一人前のデグーに。
そして、この頃になってもトラブルを起こし続けていた子は順次里子に出され、他の飼い主と巡り会います。
先述しましたが、うちでトラブルメーカーだった子たちも他では無事に馴染んでくれたそうです。
こうして、私に平穏な日々が訪れ、今日に至ります。
ちなみに我が家では六匹の子が誕生し、一匹も☆にならず成長しました。
比率はオスが二匹、メスが四匹で、そのうちメス二匹を里子に出し、残ったのはオス二匹とメス二匹。ケージを分けてからも元気に成長しています。
母デグーはこの何年か後に死んでしまいましたが、父デグーは今も元気です。
ただ、同居する息子たちにマウントを取ってオシッコかけまくる(デグーの習性)ので、途中から別々になりましたが(笑)
以上、我が家のデグー繁殖記録でした。
楽しんでいただけた、これから繁殖にチャレンジする方の参考になった……とかなら嬉しいのですが。
では、また次回……最終話でお会いしましょう。
ここまでお付き合いいただき、ありがとうございました~。
次話は7月24日か25日、どちらかの夜に投稿します。
最後まで、どうかよろしくお願いいたします。