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33/42

33 提案


「昼は昼飯食う時間だから当然だろ」

「その当たり前の時間を木彫りで潰してる師弟もいますけどね?」

「なにい?常識のねえやつらだな」


責める声ではなく揶揄う調子で言えばワンさんもとぼけて他人事のように笑う。


「ワンさんもチェンくんも、体が資本なんだから食べなきゃ駄目じゃない」

「ははっ。悪ぃ、どうも気が向かなくてよ」

「気が向かないんじゃなく、気がついてないんでしょっ」


私とワンさんの応酬に真面目さが足りなかった為か、ぷりぷりと注意を向けるターニャさんへ素直にワンさんは謝った。食べないことへの罪悪感はあるらしい。

追加でお叱りを受けているワンさんを放置し暫し黙り込む。その時、部屋の隅に積まれたカボチャが目に入った。木彫りではなく、食べられる方のカボチャだ。



「ターニャさんにお昼食べさせて貰えば忘れないんじゃないです?」

「あ?なんだ急に」


突如発言した私に、ワンさんとターニャさんの視線が集まる。


「いや昼食をターニャさんに持って来て貰って声を掛けられたら流石に食べるかなって」

「ターニャに迷惑かかんだろ、第一この店は昼別に閉めてねぇし」


子供の発言だからと甘い判断をしないワンさんが正論で即座に斬りかかる。そこは紛れもない事実なので私は出しゃばったことを言ってしまったと謝罪しかけるが、その前にターニャさんが口を開いた。


「わ、私、実は昼二時間くらいはお店閉めといてもいいなーって思っててね……!」

「けどターニャにメリットがねえだろ」

「あるっ!……よ?」


ターニャさんは昼食作りにかなり前向きなようだ。最後は勢いで答えたのか、続く言葉は中々出てこない。


「あの、」

「そうですよワンさん、ターニャさんにもメリットはあります!これはお仕事です。お店を閉めてる間の時間を使った『昼食配達のお仕事』!お給金という立派なメリットが生まれます!まあ払うのはワンさんなんですが」

「……ほぉん?」


ターニャさんの言葉を遮り私はプレゼンを始める。まあプレゼンと言うには拙過ぎる短慮な思い付きなのだが。


「私、お給金なんて……」

「それにターニャさんには他にもメリットがあります。たくさん貰ってしまうカボチャ!持ってくる昼食に使ってもらえたら、ターニャさんが無理にカボチャばかり食べる事態を回避出来ます!」

「あっ、それはホントに良いっ」


お金をもらうことに関しては難色を示していたターニャさんだが、カボチャの話には強めに頷いてくれた。

好きなものとはいえ毎日毎食カボチャ漬けでは他のものが楽しめないし、ターニャさん自身もカボチャを食べ過ぎで嫌いになりたくないと言っていたからだろう。

既にターニャさんは昼食を持ってくる体で話を聞いている様子だし、あとはワンさんがOKを出すかどうかで決まりそうだ。

私とターニャさんは、ワンさんへと視線を向けた。ワンさんは私たちと視線を合わせないまま、カボチャのパウンドケーキを一口食べる。


「……まあ、こういう美味いもんを昼に食えるのは良いな」


小さく呟くそれが、ワンさんからの了承だった。

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