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32 カボチャのパウンドケーキ


ワンさんのお守りを託された私だが、正直六歳児にそれを任せるチェンの気持ちも分かってしまうのだ。

なにせ此の木彫り師、木彫り以外のことがてんで出来やしないのだから。


朝はワンさんのところに住み込んでいるチェンと共に買ってきたパンかターニャさんにもらったカボチャパンを食べ、昼は忘れていなければまたパンを齧り、夜は外に食べに出るそうだ。

炊事以外も最低限のことしか出来ず、チェンが弟子になってからはチェンが洗濯や掃除をしているらしい。とはいえ、チェンもワンさんにやらせるよりはマシだからやる、といったレベルだとか。


こんな具合だから、ここ数日で私が昼食にとサンドイッチとスープを作ったら二人に引くほど感謝された。

遠慮なんかせず初日から作っていればよかったと今なら思う。


「ワンさんとチェン、ご飯食べずに木彫りし続けて餓死とかやめてくださいよ?」

「そうだな……。パキラのやりたいことがオレとチェンの世話係であることを祈るか」


至極真面目に呟くワンさんの願いの内容に私は意を唱えるより先に、お手伝いさんが自分のやりたいことの可能性もあるかと返事が止まる。

……いや、私が家事をすることで喜んでくれるのは嬉しいが、それがやりたいことになるかはピンとこないな。



「来たぞ、ターニャ」


私がまた頭の中で迷走している間にも歩は進み、ターニャさんの店の前へ到着していた。

相変わらず子供の身長では恐怖を感じるほど高く聳えるカボチャの壁に見下ろされながらターニャさんが出てくるのを待つ。


「はーい!お待たせ、ワンさん!パキラちゃんも、いらっしゃい」

「お邪魔します!」

「おう。邪魔すンぜ」


橙の正面扉が開かれ、ワンさんと私は店内へ足を踏み入れる。お客さんはいないようだった。

此の店であまりお客さんを見かけたことはないが、毎日ではないにしろ頻繁に商品を補充に来ているしずっと閑古鳥が鳴いているわけではないのだろう。などと商品を並べながら私は若干失礼なことを考える。




「並べ終えたらお茶にしませんか?カボチャのパウンドケーキがあるの」

「お。そりゃあ助かるな」

「いいんですか?」


裏に戻ってもお客さんから声が掛かれば聞こえるだろうが、ターニャさんは来客中お店を一度閉めることが多い。

あまりお邪魔したら迷惑なのではと尋ねてみるが、ターニャさんは既に店の入り口を『休憩中』に変えて閉めるところだった。

そのまま促されて結局三人で裏に入りお茶の時間と相なった。カボチャのパウンドケーキは控えめな甘さでとても美味しい。


「結局お言葉に甘えちゃいましたね……。美味しいです」

「ありがとう。いいの、此の時間は殆ど開店休業みたいなもんだから」

「昼飯時は、飯屋以外の店は暇なもんだからな。大体の店は昼二時間くらいは休憩も含めて閉めてるところが多い」

「そうなんですか?」


ペリカムでは基本昼は教会にいたので、其の時間帯の街の暮らしは分からない。けど、確かにご飯時に教会へ訪ねてくる人はあまりいなかったかもしれない。

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