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31 未だ光見えず


ワンさんとチェンに木彫りを習い始めて10日が過ぎた。朝から夕刻まで休憩を挟みながら木材を彫り続け、片付けを終えてからチェンと共に虫捕りをする。

その間に二つのネコの木彫りを完成させたが、始めたての木彫りに対する楽しさ以上のやり甲斐はまだ見出せずにいた。


今は当初の目的であった木彫りのクマを作るべく木材に下絵を入れているところだ。前世のような鮭を咥えた木彫りのクマの見本は当然ながら此処にはなく、ワンさんの作ったクマの木彫りや、他の動物の木彫りを形の参考にしてワンさんに下絵を確認してもらっている。



「……そろそろターニャのところに納品に行くか。パキラ、着いて来い」

「はーい!」


下絵が粗方出来上がったところでワンさんに声をかけられ道具を置いた。

チェンはワンさんからの課題にカマキリを彫ると決めたようで、作品作りに熱中して作業場の一角で木材を彫り続けている。私たちの会話も一切耳に届いてないようだ。

なるほど、ここまでいかないと木彫り馬鹿にはなれないのだろう。だとしたら私はまだまだなれそうにもない。


「チェン!私たち、ターニャさんのところに言ってくるからね!」

「んー……」


聞こえているのかいないのか、聞こえていても理解が出来ていないように感じるチェンの生返事に、私はそっと背後へ近寄り彼の持つ平刀が作品から離れるのを待つ。

彫っていた作品から刃を離し作品のバランスを確認しようとするチェンに、私は再度声を掛ける。今度は肩を叩きながら。


「チェン。ワンさんも私も居なくなるから、入り口閉めておくよ」

「んおっ、お?おお、もうそんな時間か……」


矢張り集中し過ぎて内容が耳に入ってなかったのか、一度作品を置いたチェンが軽く伸びをする。熱中すると前屈みになってしまうのだろう、肩や腰に悪そうだ。

ワンさんも小さめの作品を作るときは背を丸めてしまっていて、よく腰を拳で叩いたり肩を自分で揉んだりしている。

マッサージなんか覚えてきたら喜んでもらえるだろうか。いや、私の腕力でのマッサージって効くのだろうか?神様に肩こりや腰痛に効く魔法でも聞いた方が役に立てるかもしれない。

私が二人の肩凝り腰痛対策を難しい顔で考えていると何故かチェンが苦笑しながら立ち上がったので、不思議に思い見上げる。


「呼んだのに気付かなくて悪かった、むくれるなよ」

「……へ?あ、違う違う!考えごとしてだだけだって!」

「そうか?まあ、鍵は俺が閉めとくからワンおじを頼むわ」

「なんでオレが頼まれる側なんだよ」


六歳児にお守りを託され不満顔のワンさんに私は回収され、共に雑貨屋『猫草』へと出発した。

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