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27 木彫り馬鹿たち


作業場は外から見た通りに石造りで頑丈そうな印象を受けるが、冬場はきっととことん冷えるんだろう。

ペリカムの教会と同程度の広さがあるように感じる作業場は、作業スペースと荷物置き場で部屋が分けられてはおらず大量に置かれた木彫り作品の圧迫によって窮屈に感じる。


置かれた木彫りは大型のものから中型のものが目立ち、街で大概の玄関先に置いてあったものと似たモチーフのものもあった。

街にある木彫りの一体どれくらいがワンさんの作ったものなのだろう。きっと少なくはない筈だ。


完成品と思わしき木彫りの他に粗く彫ったまだ丸太に近いようなものもあるので、恐らく其の付近が作業スペースなのだろう。工具が並ぶが、生憎学校の授業で小さな棚くらいしか作った経験が無い為に名称の分からないものの方が多かった。

ノコギリは分かるが、それも刃が大きいものと小さいものがあって何方を何の用途で使い分けるのかは分からない。

流石に仕事道具に勝手に触れてはいけないかと其の場に屈んで先端が平たい金属で出来た工具を見ていると後ろから足音が近付いて来た。


「そこはワンおじが今作業してるところだな。作品に手を加えさえしなきゃ、多分道具さわっても怒らないよ」


私が仕事道具を見ていたのに気が付いたのだろう、隣に屈み自ら率先して道具を手にすると私に差し出してくる。

私がそれを受け取ると『それは平刀、こっちに先端の金属が違うものがあって』と次々説明してくれた。その説明に、平刀って彫刻刀にあったようなとぼんやりと思い出す。だが其の頃に使っていた彫刻刀より、今持つ平刀の方が明らかに大きい。私が子供だからというのを差し引いてもだ。

名称は似ていても全く違う道具だったりもするのだろうか。


一通り道具の説明をしてから、チェンは二つ木製の椅子を出してきた。木製ということは、これもワンさんが作ったのかもしれない。


「座ってて。お茶持ってくるから」

「椅子ありがとう。手伝うよ!」

「いい。注ぐだけだし」


断りを入れてから直ぐに作業場の隅に走ったチェンは、作り置きしてあったらしいお茶を木のカップに注いで戻って来た。本当に手伝い要らずだ。

差し出されたカップを手に取ると、熱は感じられなかった。作られてから時間が経っているのだろう。


「ありがとう。……お茶を用意してるのって、ワンさんが作業に没頭しちゃうから?」

「んー。俺も没頭しちゃうからだな。飯も食べ忘れるけど、水分取っとけばとりあえず死なないし」

「チェンも木彫り馬鹿じゃん!?」

「はは、じゃなかったらワンおじのとこで弟子やってないよ」


木彫り馬鹿と言われて嬉しげにチェンは笑う。それだけ熱中出来ることが自分で誇らしいのかもしれない、私はチェンじゃないから其の心内は分からないけれど……、なんだか羨ましかった。


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