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20 雑貨屋、猫草


全力で木彫りを始めてみるなら、全力で木彫りに取り組んでいる人の作業姿はきっと勉強になる筈だ。

私は熱の籠った目で女性を見つめる。


「ワンさんに?……んー。たぶん作業場に居るだろうけど、集中してると来客に気付かないのよね。あと二時間待てるなら此の店にも来るんだけど」

「なら、また二時間後此の店に来ます!ええと、名乗ってなくてごめんなさい。私パキラと言います!カボチャの壁が凄かったから、木彫り作りについて聞いてみたくって」


思わず早口になる私に、女性は声をあげて笑う。


「あはは!それは私こそだわ!ごめんね、私はターニャ。此の雑貨屋の店主よ」


彼女、改めターニャさんは『此の』と言いながら視線を己の店に向ける。愛おしげに細められた眼差しから、彼女が店を大切に思っていることが窺えた。


「雑貨屋って、どんなもの扱って」

「そうだ!パキラちゃん……くん?」

「どっちでも大丈夫です」


私の言葉を遮るターニャさんの質問に思わず顔が緩む。ちなみにペリカムでの呼び方割合は半々だったように思う。まあ前日『パキラくん』と呼んだおば様が次の日には『パキラちゃん』と呼んだりするから正確なところは分からないが。


「そお?じゃあ、パキラちゃん!二時間待つ間やることある?ないなら、うちでお昼でも食べていかない?」

「……え、いいんですか?」

「いいよいいよ!一人で食べるより、その方がご飯も美味しいし!店の中も見て行って欲しいな!」


一応まだ一緒に食べるとは返事をしていないのだが、ターニャさんは私の手をとって引っ張ると橙の扉へ向かう。そして看板を『休憩中』に変えると、店内へ進んでいった。

私の手を引いたまま。

どうやらターニャさんはせっかちな性格のようだと、大人と子供で違う歩幅のせいで若干引き摺られるようにして私は店内へとお邪魔した。



「わあ……」


踏み入れてすぐに情報として届いたのは木の香りだった。正面のカボチャ壁にばかり意識が向いていて気がつかなかったが、この店は木造建築だったのか……。そう思い辺りを見回して、自分の考えが半分は当たっていることを知る。


確かに此の店は木造建築だ。

然し此の過剰な程の木の香りは建物だけのせいではなかった。


「わああ……」


店内には、それはもう棚に隙間が無い程にみっちりと木製商品がひしめいているのだ。


「すごい……ですね」


凄まじい質量に圧倒され呟けば、ターニャさんは誇らしげな顔をしながら頷いてみせる。

いや、量がすごいなと思ったのですが……。

ドヤ顔を見せるターニャさんに訂正も出来ず、チラチラと周りの商品に目を彷徨わせる。


「好きに見てて!お昼温め直してくるから!」

「あっ、お手伝いします!」

「いいからいいから〜!」


繋ぎっぱなしだった私の手を解放しひらひらと手を振るターニャさんの後に続こうとしたが、すぐ様移動する彼女は私を置いてさっさと奥の部屋に入ってしまった。

仕方がない。私は食後の片付けはしっかり手伝わせてもらおうと思い直し、並べられた木製商品の数々を眺めて回ることにした。

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