18 木彫りの
グラマトの街は木で出来た家ばかりなのかと想像していたが、建物の建材だけを言えばペリカムとそう変わりはないように見えた。
ただ明らかに別の街なんだなと感じる箇所は、殆どの家の玄関先に置かれた木彫りの置物の存在だ。
それは大小様々あり、大きいものは私を縦に二人積んだよりもっとありそうで、小さいものは大人の拳くらいの大きさだ。
あるものは巨大な猫、あるのもは拳サイズのドラゴン、モチーフも様々なようで同じモチーフでもポーズや顔付きが違っているので一点ものばかりなのだろう。
日焼けをしているように暗い色になっているものもあるが、どれも表面は綺麗そうに見えた。
大きいものなどは移動も大変そうだが、雨が降ってきた時など外に放置してこの姿は保てるものなのだろうか?
『……案外探せば木彫りの熊置いてるかもね』
疑問を抱きつつ木彫りの兎をまじまじ見ていた私に神様の声が落ちてくる。
確かに動物の木彫りが多いからその可能性は大いにあるのではないだろうか。特にモチーフに決まりはないのか、玄関先には様々な木彫りが並んでいる。
私は自分で彫るより先に此の世界産の木彫りの熊を探してみようと街を散策し始めた。
兎、蛇、花と蝶の彫られた球体、……なんだろう何か三角のもの、馬、鳥、亀、ねずみ。
そしてカボチャの壁。……カボチャの壁?
一度通り過ぎようとして引き返す。
いやいや何やらカボチャの木彫りがめちゃくちゃ積み重なっていたような。いや、いたようなというか確実に積み重なっていたのだが。
「なあにこれえ」
『カボチャでしょ』
思わず呟いた言葉に即座に返る神様の返答に、違うそこじゃないと首を振りたくなる。
確かにそれはカボチャだった。普通のカボチャではない、木彫りのカボチャだ。
一つが私の頭……、子供の頭くらいの大きさのもので、精巧に作られたそれがとある建物の一階部分外壁を埋め尽くすように積まれているのだ。
一切意味が分からない。
分からないながらにカボチャの壁を眺めて進んでいくと、唐突に看板が目に入った。
《雑貨屋 猫草》
ちんまりと橙の扉が其の隣に並んでいる。
これは客寄せの為のカボチャだったのだろうか……?
圧倒的に気になる店になることは間違いないが、これは入るのを躊躇する人も多いのではないだろうか。
可愛らしい字で『営業中!』と書かれた扉を私はどうするべきかと見つめるのであった。




