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14 変わるもの



日常が変わるかと思ったら変わらなかった。

変わらず過ぎた日々は一年にもなる。



『お祈りはどこでも出来る方がいいよね!』

という神様の御言葉により、私の腕には青い宝石の嵌った腕輪がつけられることとなった。つるんとした半球体のソレは内側に緑地のような緑があり、大地のような土色があり、海のような紺がある。まるきり半分にした地球のようだ。

此の腕輪を通じて神様へ祈りが届くから、何処から祈ってもいいというゆるゆる信仰である。



ダンジョンでの神様との会合から帰還した私は普通に大歓迎され、元の通り神父様と教会で暮らすこととなった。

神様は誇張無くいつでも私に会いこられるようで、部屋でこっそり呼び掛ければ次の瞬き後にはベッドに寝転んでいたりする。

ダンジョンから帰りもう一年程になるが其の間に女神プリザの姿を見ることはなく、神様いわく『あの子はあの子で入れ込んでる子がいるから』とのことだった。神は地球でも異世界でも贔屓をつくるもの、と心のメモに残しておこう。



変わらぬものもあれば、変わったものもあった。

先ずはダンジョンが出来たことによりペリカムの街が賑わったこと。街には冒険者向けの宿や飯屋、武器屋など店が増え、元からある店も栄えた。イセンとメリアいずれかが継ぐであろうアルスト商会も大きく勢力を伸ばし商売拡大をしている。

件のダンジョンだが、私が入った白壁の部屋は神様の領域(縮小版)だったらしく、あの時は神様により即座に転移をさせられていたらしい。普通に入ったら岩壁のゴツゴツしたダンジョンがそこにある。よかった、真っ白な部屋だらけのダンジョンとか異質すぎて怖い。


もうひとつ変わったのは、私が魔法を使える様になったこと。

元々は欠片も使えなかったのだが、今は『こういう魔法が使いたい』と想像すると大概の魔法を使えるようになっているようだ。

人目を避けてダンジョンの誰もいない層で練習と実験を繰り返している。

今のところ誰にも魔法が使えるようになったことは話していない。


『なんで内緒にするかな〜』


不服げな神様が天井に座っている。神様じゃなければとんだホラー案件だ。

私は本を閉じて神様を見上げた。今回も輪の中は覗かないようにしながら。


「魔法がべらぼうに使えるなんて分かったら学園生活編まっしぐらじゃないですか」

『いいじゃん、学園生活編!僕がモテモテハーレム見たいのを差し引いても、勉強になるし魔法で無双出来て楽しいと思うけどな〜』

「でも魔法が自在に使える『神様の遣い』に自由なんて無いんじゃないですかね」



私についてもう一つ変わったこと。

正式に『(異界の)神様の遣い』として国に認められたのだ。

ただ。祈ってさえいれば異界の神様が此の世界の為に祝福を足してくれる、私本人には特に特筆すべき能力も華もない、ついでに性別も無いということで、国から召集され囲われることはなかった。

私が今は此の地に居たい、という願いを損ねて祈りを辞められる可能性を潰したかったのだろう。

超意訳すれば『兎に角体に気をつけて長生きして異界の神様に祈ってね!』との御言葉を私に、中々の額の寄付金を教会に与えてくれた国王陛下はお優しい御方だが、支える配下の中には打算的で狡猾、合理的な者も多いと聞く。

私が祈る以外にも使える手駒だと知られたら、見張りやすい王都や王城に留め置かれるのかもしれない。

もしかしたら軟禁して無理やり祈り続けさせられる生活なんてものもあるのかも。……なんて考えては身を震わせる。


自分の選びたい進路がまだ決まらない私は魔法を使える事実を隠す選択を継続するのだった。

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